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 「これまでは空飛ぶクルマの認知を高めるような活動が多かった。それが2022年夏ごろからは、夢物語ではなく、どうやって社会実装をしていくのか、より具体的なテーマに議論が移行している。そうした中で、参入を検討している企業が事業判断をするための材料が不足しており、検討が保留となるケースが多いことが課題となっている」

 空飛ぶクルマ、つまり電動垂直離着陸(eVTOL)機を開発するスタートアップのSkyDrive(スカイドライブ、愛知県豊田市)は、2023年2月14日に三重県デジタル社会推進局がオンラインで開催した「『空の移動革命』実現に向けたシンポジウム2023」に登壇し、社会実装に向けた議論を進めるうえで見えてきた課題などに言及した。同社エアモビリティ事業部事業開発グループの金子岳史氏が講演した。

 SkyDriveは2025年4月に開幕する「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)において、大阪ベイエリアで国内初となるエアタクシーサービスの開始を目指している。2018年設立の同社は、最初に1人乗りの試作機「SD-03」を開発し、2020年8月に有人飛行試験を実施したりしていた。

 2022年9月には、商用機「SD-05」のデザインや仕様を発表した(図1)。機体のタイプはSD-03と同様、マルチコプター型で2人乗り、つまりパイロット1人のほかに乗客1人が搭乗できる。2025年の商用化に向けて開発を進めると同時に、同年初頭までに国土交通省の型式証明の取得を目指している。

図1 商用機「SD-05」のデザイン
図1 商用機「SD-05」のデザイン
2人乗りで、パイロット1人のほかに乗客1人が搭乗できる。機体寸法は全長9.4m×全幅9.4m×全高2.7m。最大離陸重量は1100kg。最高巡航速度は100km/h。ローター(プロペラ)は12基を搭載(写真:SkyDrive)
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 金子氏は「SkyDriveは世界に約400社あるといわれるeVTOL機メーカーの中で、10番目に実際に人を乗せて飛行した。これまでに147億円の投資を受けている。海外の機体メーカーとともに、新しい産業の創造を目指している」とした。

 既にビジネスサイドでは海外で動きが出ており、2022年11月にはベトナムのデベロッパーPacific Group(パシフィック・グループ)がSD-05を最大100機プレオーダー(10機が確定、90機がオプション)する覚書を、同社と締結したと発表した。

 2023年1月には、米国市場への参入計画とサウスカロライナ州に事業拠点を置いたことを発表した。サウスカロライナ州ではSD-05の2026年の運航開始を目指して、協業・提携のネットワークを構築していくという。