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 東レは2023年2月16日、炭素繊維複合材料(CFRP)製のモビリティー向け部材を高速に成形する製造技術を開発したと発表した。例えば、実証用に製作した自動車ルーフの大型パネルでは、汎用のプレス成形機を使っておよそ5分で成形できる(図1)。従来のオートクレーブ成形と比べて「10倍の成形速度」(同社)という。

図1 試作した自動車ルーフ
図1 試作した自動車ルーフ
大きさは縦1.2m×横1.2m×厚さ2.3mm、重さは表面の白い塗装込みで2.6kg。部材の右下部分は、断面観察用にカットされている。(出所:東レ)
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 新たな成形技術で造るCFRPは、軽量な炭素繊維多孔質材料(CFRF)をコア材とし、力学特性に優れる熱硬化性プリプレグをスキン材としたサンドイッチ構造体だ(図2)。コア材のCFRFは同社独自の多孔質材料。加熱することでバインダー樹脂が柔軟になると同時に炭素繊維の復元力で膨張し、3次元的なネットワーク構造(多孔質)を形成する(図3)。一方、スキン材の熱硬化性プリプレグには、炭素繊維に樹脂を含浸させたシート状のCFRPを使う。

図2 新たな成形技術で造るCFRP部材の構造
図2 新たな成形技術で造るCFRP部材の構造
(出所:東レ)
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図3 CFRFが膨張するメカニズム
図3 CFRFが膨張するメカニズム
加熱することでバインダー樹脂が柔軟になり、炭素繊維の復元力で膨張する。(出所:東レ)
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 新たな成形技術は、コア材のCFRFをスキン材の熱硬化性プレプリグで挟み加熱加圧することで、コア材の膨張を利用した形状賦形、スキン材の熱硬化、コア材とスキン材の接着を同時に行う(図4)。これにより、ワンショットのプレスで一体成形でき、加工時間の大幅な短縮につながった。従来はコア材の成形(削り出し)と、スキン材の硬化・接着が別々の工程だった(図5)。

図4 新たな成形技術の加工工程
図4 新たな成形技術の加工工程
(出所:東レ)
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図5 従来の成形技術の加工工程
図5 従来の成形技術の加工工程
(出所:東レ)
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