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 カシオ計算機は2023年2月27日、代表取締役社長CEO(最高経営責任者)に現専務執行役員時計BU事業部長の増田裕一氏が昇格する人事を発表した。同社創業家以外からの初の社長になる。新社長就任は同年4月1日付の予定で、代表取締役への就任は同年6月の定時株主総会で決定する見込み。現社長の樫尾和宏氏は代表取締役会長に就任する。

カシオ計算機の新代表取締役社長CEOに就任する増田裕一氏
カシオ計算機の新代表取締役社長CEOに就任する増田裕一氏
(写真:カシオ計算機)
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 記者会見で現社長の樫尾氏は「2023年度からの次期3カ年中期経営計画開始と同時に社長を交代するのが良いと考えた。新計画達成のポイントは時計事業の再成長と、時計事業の成功事例を教育、楽器など他事業へ展開していくこと。増田専務は入社以来時計事業に携わっており、その経験とノウハウを最大限に生かしてもらうべく新社長に指名した」と語った。さらに、「これまで当社はRPDCAサイクルの監督が少し弱かったため、その点を会長として専念したい」(樫尾氏)と述べた。

* RPDCAサイクル 調査(Research)、企画立案(Plan)、実践(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル。

 増田氏は、「時計事業で『G-SHOCK』という唯一無二のブランドを確立できた経験を生かしていきたい」と語った。「時計事業の規模が2010年から2015年にかけて、700億~800億円から1600億円へと倍増した時期に時計事業部長を務めていた。しかしその前の時期は、デジタル技術を活用しようとしても成長につながらず、苦しい思いをした。ネタが尽きたと思ったところで、デジタル一辺倒ではなくアナログの時計ムーブメント技術をデジタルで変えようという取り組みが功を奏して、結果的にそれまでの業界にない新しいデザインカテゴリーが生まれた」と説明する。このとき「事業の目的がはっきりして、社員が活性化した。この経験をさらに他の事業にも広げていきたい」(同氏)と意気込みを語った。

 製品開発の方向については「時計事業であれば、強い資産であるG-SHOCKブランドで土俵をしっかりつくり上げ、その上でスマート機能を展開していきたい」(同氏)。同社の時計事業はスマートウオッチとの競争にさらされているが「スマートウオッチは競争の激しいレッドオーシャンで、我々がそこへ直接入って製品の性能の優劣で勝負するのは得策ではない。現在既に、スマートウオッチの勝ち組は、例えば米Apple(アップル)のようにスマートフォンやそのOS(オペレーティングシステム)など、既存のブランドを確立している企業。我々もG-SHOCKブランドのベースを広げる形で進んでいきたい。コアなファンが集まれば、他のカテゴリの事業も引っ張られる効果が生まれると考えている」(同氏)。

社長就任への意気込みを語る増田氏
社長就任への意気込みを語る増田氏
(写真:カシオ計算機)
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