スイスSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、USB充電器に向けたデジタル電源制御ICの新製品「ST-ONEHP」(図1)を2023年2月27日(現地時間)に発表した ニュースリリース 。新製品を同社のGaN(窒化ガリウム)パワー・トランジスタ・モジュールと組み合わせることで、最大140W出力のUSB充電器が実現できる。USB充電器(AC-DCアダプター)やノートPC、充電器内蔵の小型電子/電気機器などに向ける(図2)。
同社によれば、新製品のST-ONEHPは、USB Power Delivery Extended Power Range(USB PD 3.1 EPR)規格認証を取得した世界初のデジタル電源制御ICである ニュースリリース 。同社は、USB PD 3.1 Programmable Power Supply(USB PD 3.1 PPS)に対応したデジタル電源制御ICとして「ST-ONE」(1ポート用)と「ST-ONEMP」(2ポート用)を提供している。これらを使うと、最大100W出力のUSB充電器が実現できた。今回、最大出力が40W高まった。
新製品のST-ONEHPは、既存のST-ONE/ST-ONEMPと同じ制御方式(ゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)の非相補型アクティブ・クランプ・フライバック方式)を採用したことで*1、高出力時や高スイッチング周波数動作時でも、高い変換効率が得られるとする。また、2次側レギュレーションやUSB PDインターフェースなどの主な機能を内蔵しているため、部品コストの低減や基板の小型化、設計簡略化に寄与するという。
ST-ONEHPの制御回路は、ST-ONE/ST-ONEMPと同じく、「Arm Cortex-M0+」CPUコアをベースにして構成した(図3)。制御回路には、認証済みのUSB PDファームウエアがプリロードされており、最終製品におけるUSBロゴの認証取得を簡略化できるという。64Kバイトのフラッシュメモリーを備えており、電力変換用のファームウエアをカスタマイズできる。ST-ONEHPは現在、主要顧客向けにサンプル出荷中である。1000個購入時のチップ単価は約3.90米ドルである。