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 自動運転車を開発するスタートアップのTURING(チューリング、千葉県柏市)は2023年3月1日、車両の開発受託を手掛ける東京アールアンドデー(東京R&D、東京・千代田)と戦略的パートナーシップを締結したと発表した(図1)。両社はチューリングが得意とするAI(人工知能)やソフトウエアの技術と東京R&Dが持つ車両の開発、製造への知見を持ち寄り、自動運転機能を備えた電気自動車(EV)を共同開発する。

図1 チューリングCEO(最高経営責任者)の山本一成氏(左)と東京R&D社長の岡村了太氏
図1 チューリングCEO(最高経営責任者)の山本一成氏(左)と東京R&D社長の岡村了太氏
(写真:日経Automotive)
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 チューリングは「完全自動運転EVの量産メーカー」(同社)を目指すスタートアップ。世界で初めて将棋のプロ棋士に勝利したAI「Ponanza(ポナンザ)」の開発者である山本一成氏〔同社CEO(最高経営責任者)〕と米カーネギーメロン大学で自動運転の研究をしていた青木俊介氏〔同社CTO(最高技術責任者)〕が、2021年8月に共同で創業した。AIやソフトの技術に強みがある。

 同社は完成車メーカーのように車両の企画から設計、開発、製造までを一気通貫で手掛ける。法規認証や部品の調達などにも自社で取り組む中で、車両の量産に向けてはサプライヤーとの関係構築や車両の開発プロセスの確立など課題が多い。そこで、自動車メーカーを中心に開発を支援してきた実績や自動車メーカー、部品メーカーの情報網を持つ東京R&Dと協業した。

 チューリングは、2025年に「レベル2+」の自動運転システムを備えたEVを100台生産・販売することを目指す(図2)。2030年には「レベル5」の自動運転システムを備えたEVを1万台生産・販売する目標を掲げている。

図2 2030年までの事業ロードマップ
図2 2030年までの事業ロードマップ
(出所:チューリングの資料を日経Automotiveが撮影)
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 2023年は、まずEVの主要部品、基本機能だけで構成する試作車の開発に取り組む(図3)。具体的には「走る」「曲がる」「止まる」や「システムの起動と停止」「充電」の5つの機能に絞るという。既存のEVの分解調査や流用する部品の選定などを経て、試作車の車両制御やシャシーの開発に取り掛かる。

図3 2023年における試作車の開発計画
図3 2023年における試作車の開発計画
2023年10月から東京で開催される「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」に試作車を出展する予定。(出所:チューリングの資料を日経Automotiveが撮影)
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 試作車の開発後は、内装と外装のデザインや量産車に搭載する部品を使った設計、認証を得るための試験などを実施していく。