「ロボット技術はまだ成長途上にある。社会実装を進めるためには、人間側が社会に対する考え方を変え、ロボットに対してフレンドリーに接する必要がある」
ロボットの普及やロボットを導入しやすい(ロボットフレンドリー)環境の実現を目指す、一般社団法人「ロボットフレンドリー施設推進機構」(RFA)代表理事の脇谷勉氏は、2023年3月8日に開催した「ロボットフレンドリー×施設管理 令和4年度成果報告会」でこう発言した(図1)。
高齢化や少子化に伴う人口減によって、経済活動の維持のために人間と協働するサービスロボットの社会実装が喫緊の課題となっている。しかし、脇谷氏は人間側がもっとロボットに寄り添って社会環境を変えていかないと普及は望めないとした。成果報告会で登壇した経済産業省製造産業局産業機械課ロボット政策室室長補佐の板橋洋平氏も「サービスが多少いびつでも受け入れる人の寛容さが重要」と話した。
こうした見解は、これまで経産省とNEDO(産業技術総合開発機構)が、人手不足が深刻な施設管理、小売り・飲食、食品の3分野についての「ロボット実装モデル構築推進タスクフォース(TF)」で進めてきた実証実験が浮き彫りにした数多くの課題が導いた結論である。
RFAは施設管理分野において、TFに設けた「施設管理TC(テクニカルコミッティー)」への参加企業25社が主体となって、2022年8月に設立された。今回の成果報告会では、会員企業のパナソニックホールディングス、森トラスト、東急不動産、三菱地所などが実証結果や課題などを報告した。
掃除ロボをいったん退避
パナソニックホールディングスは「複数ロボットの群管理制御の標準化」をテーマに、実証内容を報告した。具体的には、オフィスビルで複数のロボットを稼働させる際にどんな問題が起き、それをどう制御するかを実証した(図2)。
例えば、オフィスビルで配送ロボットとロボット掃除機を同時に稼働させ、両者が狭い廊下などで出くわすと、通常はロボット掃除機が配送ロボットの通行の障害物となる。ロボット掃除機はエリア内の床を塗り潰していくように清掃するためだ。
そこで、パナソニックは配送ロボットの優先度を高め、配送ロボットが通過する際にはロボット掃除機がいったん退避し、通過後に清掃を再開するという運用を実施した(図3)。この運用ではロボット掃除機の退避地点をあらかじめ設定しておく必要があるが、それは実際に導入する現場(狭い通路なのか、広いエリアなのか)によって変わってくる。
ただし、こうした現場ごとの最適化は、ロボットの普及という観点ではマイナスの要因となる。パナソニックホールディングス事業開発室ロボティクス・アクセシビリティPJ総括担当の黒川崇裕氏は「(施設ごとの)ロボット管理プラットフォーム間の情報連携やロボット運用における標準的なルールが必要」と指摘した。