SFの世界から飛び出したような兵器が姿を現した。三菱重工業と川崎重工業は、防衛・セキュリティーの総合展示会「DSEI Japan」(2023年3月15~17日、幕張メッセ)に、高出力レーザーを使った車両搭載型のドローン撃墜システムのプロトタイプをそれぞれ出展した。
ロシア・ウクライナ戦争でもドローンの利用がメディアで数多く報道されているように、近年、ドローンを偵察や地域の情報収集などの軍事目的に使う事例が増えている。
ドローンはミサイルで撃ち落とすこともできるが、ミサイルは1機当たりの価格が高く、多数のドローンの撃墜には使いにくい。一方、レーザーなら電力を確保すれば繰り返し発射できるほか、発射時の騒音や火炎がないため敵から発見されにくい利点がある。
三菱重工は今回、出力10kWの固体レーザーを使用する撃墜システムを展示した(図1)。レーザーには、加工などに使われている固体レーザーの一種である「ファイバーレーザー」を使う。コアに希土類元素のYb(イッテルビウム)をドープした光ファイバーを増幅媒体として利用する装置である。レーザーの波長は近赤外域の1μm帯で、射程は1.2kmだという。
同社のブースではドローンを撃墜するテストの模様を撮影したビデオを流し、実際に撃ち落としたドローンも展示した(図2)。なお、大気中の水分によるレーザー光の吸収の影響については、「ある程度の降雨では大きな問題はないが、霧やもやの影響については今後確認する」(説明員)としている。
三菱重工が開発したシステムでは、内蔵する広角カメラと望遠カメラを使って的を絞る。まず、広角カメラで飛行中の物体を捉え、その画像をAI(人工知能)で解析してドローンを識別する。そしてレーザーと同軸に配置された望遠カメラでドローンを追尾してロックオンし、レーザーを発射する。
技術的なポイントは、上空を飛行するドローンにレーザー光を正確に当てること。そのために、同社が誘導ミサイル向けに開発した画像処理技術を応用しているという。