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 コニカミノルタは2023年3月15日、「Konica Minolta Day」と題した、経営方針や重点事業に関する説明会を開催した。その中で、自社外での二酸化炭素(CO2)削減量が、自社製品の製造過程で発生するCO2を上回る「カーボンマイナス」を実現する時期を従来の2030年から2025年に前倒しすると発表した。併せて、2050年における製品ライフサイクルのCO2排出量の削減目標を、従来の2005年比80%削減から実質排出量ゼロに引き上げた。再生可能エネルギーなどの導入を進めるほか、自社の製品や技術で取引先のCO2を削減する。

 説明会では、特に成長が期待できる「ハイパースペクトルイメージング(HSI)」「IJコンポーネント」「商業・産業印刷」「メディカルイメージング」の4事業について詳しく説明した。4事業の製品はユーザーの生産工程改善や、CO2削減に役立つものが多い。気候変動への対応や働きがい向上といった、同社が定めるマテリアリティ(重要課題)の実現を支える見込みだ。

 例えば、HSIは材料のリサイクルに役立つ。HSIとは、材料がそれぞれ特有の波長の光を反射する特性を生かし、反射光から材料を識別する非破壊の計測技術だ。この技術を使うと、廃プラスチックを素材ごとに選別できる。実際にコニカミノルタグループがHSI技術を提供したスペインのPicvisaは、自社の技術と組み合わせて1時間で最大6tのプラスチック包装を分別できる装置を開発した。装置1台の仕事量は6人分 に相当するという。

HSI技術を使うとナッツの実と殻も分別できる
HSI技術を使うとナッツの実と殻も分別できる
HSI技術を搭載した装置(左)によって、材料ごとに異なる固有のスペクトルを可視化し(右上)、実と殻を区別できる(右下)。HSIはリサイクルだけでなく、品質向上を目指す食品分野など応用範囲が幅広い。(出所:コニカミノルタ)
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インクジェット技術で次世代ディスプレー

 IJコンポーネントの説明では、従来工法をインクジェット方式で置き換えて製造工程を簡素化するほか、環境負荷を低減できる利点があると強調した。例えば、次世代ディスプレーを従来工法の写真現像型で造る場合、RGBの色ごとにパターニングする必要があった。

 一方、インクジェットであれば一度にRGBのパターンを描けるので工程を簡素化できる。その結果、VOC(揮発性有機化合物)を削減したり、材料のロスを減らしたりできるという。

次世代ディスプレーのパターン形成における従来方式とインクジェット方式を使った工法の比較
次世代ディスプレーのパターン形成における従来方式とインクジェット方式を使った工法の比較
(出所:コニカミノルタ)
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 他にも、小売店で販売するおにぎりやパンなどに付けるラベルも、インクジェット印刷に置き換えるメリットがあるという。通常は食品の包装材に、別工程で印刷したラベルを張り付けている。ところが、このラベルの印刷に必要な熱転写リボンは交換頻度が高く、交換のたびにラインを止めていた。インクジェットであれば、包装材に直接印字できる。リボン交換に伴うダウンタイムを大幅に減らせるうえに、リボンやラベルといった材料も減らせるためCO2の削減も見込める。表示をカラーにできる点もメリットだ。

食品関連表示の従来方式とインクジェットを使った直接印刷の比較
食品関連表示の従来方式とインクジェットを使った直接印刷の比較
(出所:コニカミノルタ)
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