クラーク記念国際高等学校(以下、クラーク国際)、東京大学、Space BD(東京・中央)は2023年3月17日、クラーク国際の高校生を対象とする宇宙教育の一環で開発していた人工衛星が完成したと発表した。人工衛星は2023年夏までに宇宙航空研究開発機構(JAXA)に引き渡し、同年秋に国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げる予定。衛星の運用開始後は宇宙から撮影した地球の写真などを、環境問題の解決に向けた活動に役立てる方針だ。
人工衛星の名前は「Clark sat-1(愛称:Ambitious)」。クラーク国際が開校30周年を記念して2021年7月に始めた「宇宙教育プロジェクト」の目玉として開発した。Clark sat-1は、一般に「CubeSat(キューブサット)」と呼ぶ超小型衛星で、大きさは10cm角、質量は約0.94kg。5面に太陽電池が貼られている。地上400kmのISSからロボットアームで放出後、アンテナが展開する。撮影機能や音声・イラストデータを発信する機能を備えている。
プロジェクトの主体はクラーク国際の高校生。全国にあるキャンパスから123人の生徒が集まり、人工衛星の開発、運用、広報を行う「宇宙探究部」を組織した。宇宙飛行士の山崎直子氏や、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の中須賀真一教授などから宇宙について学びながら、人工衛星のミッションなどを策定した。人工衛星の詳細設計・製造はアークエッジ・スペース(東京・江東)、プログラムの企画や人工衛星の打ち上げはSpace BDなどが支援している。プロジェクトの関係者は口々に「高校生が主体の衛星開発は世界でも珍しい、日本では初めてではないか」と強調した。
打ち上げ後のミッションは難易度別に4段階に分かれる。まずは無事に衛星をISSから放出させる「ミニマムサクセス」。次に衛星との通信に成功する「フルサクセス」。第3段階の「エクストラサクセス」は衛星に搭載したカメラでの地球撮影と、宇宙から送信する音声とイラストデータを、地上で受信すること。第4段階の「エクストリームサクセス」は宇宙デブリの撮影だ。実現可能性は極めて低いものの、生徒が宇宙について学ぶ中で、特に宇宙の環境問題に強い関心を抱いたため、挑戦することとなった。