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 川崎重工業傘下のカワサキモータースは、防衛・セキュリティーの総合展示会「DSEI Japan」(2023年3月15~17日、幕張メッセ)で、同社の二輪車「Ninja H2R」用のエンジンをベースに開発した航空機用エンジンを搭載する無人航空機(UAV、ドローン)の開発構想を披露した。(図1)。

図1 開発中のエンジンと無人航空機の模型
図1 開発中のエンジンと無人航空機の模型
「Ninja H2R」用のエンジンをベースに開発した航空機用のエンジン(下)。それを2基搭載する無人航空機の模型(上)(写真:日経クロステック)
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 高度3万フィート(約9150m)を飛行する固定翼タイプで、航続距離が数百km程度の電動系無人航空機と、1万km以上のガスタービン系との中間の数千km程度のニーズに向ける。用途は、物資輸送や災害時の情報収集などを想定している。

 川崎重工は現在、Ninja H2Rのエンジンを搭載する回転翼タイプの無人ヘリコプター「K-RACER-X2」を開発している。ターゲットは山岳輸送で、量産機での目標は高度3100mに200kgのペイロードを運べ、航続距離として100kmを確保することである。これに対して、カワサキモータースが開発するのは固定翼タイプであり、「ペイロード、航続距離、飛行速度でK-RACER-X2とはすみ分ける」(川崎重工)としている。

 現在は開発構想を進めている段階で、2025~2026年ぐらいに航空機用エンジンの型式証明(TC)取得に向けた開発をスタートし、2030年ごろのTC取得を目指す。並行して固定翼タイプの無人航空機の試作機を開発する計画。ただし、開発目標時期は未定としている。

 Ninja H2Rの直列4気筒のレシプロエンジンは、排気量が1Lで軽量ながら、機械駆動遠心式過給機(スーパーチャージャー)を搭載することで高い出力を発揮する(図2)。回転速度が1万4000rpm(回/分)時に300馬力を出す、“お化け”エンジンである。

図2 300馬力のエンジンを搭載した「Ninja H2R」
図2 300馬力のエンジンを搭載した「Ninja H2R」
サーキット走行専用モデルで、約300馬力を出力するエンジンを搭載したモンスターマシンである(写真:川崎重工業)
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 一方で、「無人航空機では安定的にプロペラを回転させることが多く、二輪車向けのような瞬間的な高い回転速度は必要としない。むしろ、軽量で高出力なことが求められる」(説明員)。そこで、Ninja H2R用エンジンと同じピストンと動弁系を使いながら改良を加え、排気量2.1L、直列6気筒の過給機(ターボチャージャー)付エンジンを開発する計画だ。最高回転速度は8500rpmで、出力は380馬力である(図3)。

図3 開発した航空機用エンジンの仕様
図3 開発した航空機用エンジンの仕様
6気筒の過給機(ターボチャージャー)付エンジンで、最高回転速度は8500rpm、出力は380馬力(280kW)(写真:日経クロステック)
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