樹脂製の歯車から油が染み出て、かみ合わせた歯車に供給し続ける――。大阪市の金型メーカー・福井精機工業が、産業用機械向けに潤滑油の供給を不要とする樹脂製品を「INTERMOLD2023(第34回金型加工技術展)/ 金型展2023」(2023年4月12~15日、東京ビッグサイト)で披露した。産業用機械は、歯車のような金属部品の摩耗を防ぐために、人が定期的に潤滑油を差す必要があるが、同製品を機械に組み込めばメンテナンスコストを抑えられる。既に、大手ロボットメーカーが産業用ロボットの量産品で採用しているほか、減速機メーカーも量産品への採用に向けた検討を進めているという。
福井精機工業は油を染み込ませたスポンジのようなものから同製品を発想し、7~8年前から新規事業として開発に着手。樹脂材料として耐摩耗性・潤滑性が高い超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene、UHMWPE)を採用し、油を50質量%以上配合して成形品を作製した。油はUHMWPEの粒子間の隙間から染み出る。
UHMWPEは、耐摩耗性や潤滑性に優れる一方、分子量が大きいために溶けにくく、熱を加えて押し出す射出成形には向かないとされる。そこで同社は、粉末状のUHMWPEを油と混ぜてクリーム状にし、温度を制御しながら流動性を持たせて金型に流しこむ独自の成形法を開発した。なお、UHMWPEは耐薬品の高さから食品用器具などにも使われており、工業機械用の潤滑油のほかに、食品機械用のオイルなども配合できる。