ドイツInfineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ、以下Infineon)は、外部インターフェースがLPDDR4(Low-Power Double Data Rate4)のNORフラッシュメモリー「SEMPER X1」を2023年4月20日(現地時間)に発表した 日本語版ニュースリリース 。LPDDR4型のフラッシュメモリーは世界初だという。次世代自動車のE/Eアーキテクチャーである、ゾーンアーキテクチャー採用のクルマへの搭載を狙う。InfineonのSandeep Krishnegowda氏(Vice President, Marketing and Applications, Flash Solutions)が来日し、2023年5月11日に国内報道機関へ新製品を紹介した(図1)。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(以下、インフィニオン)によれば、InfineonのNORフラッシュメモリーの売上高は世界で4番目に多い。ただし車載向けNORフラッシュでは、断トツで世界1位だという。これまで同社のNORフラッシュメモリーは車載ディスプレーや車載カメラなど、画像周りで主に利用されていた。一方、今回の新製品は、クルマの次世代E/Eアーキテクチャーといわれているゾーンアーキテクチャーの中核プロセッサー、すなわちセントラルプロセッサーやゾーンプロセッサーの外付けメモリーとして利用されることを狙っている。
これまでの車載プロセッサーは65nmや40nm、28nmといったレガシーな半導体プロセスで造られることが多い。プログラムは車載プロセッサー内蔵のフラッシュメモリーに格納されることが一般的である。セントラルプロセッサーやゾーンプロセッサーは従来の車載プロセッサーよりも高い処理能力が必要なため、「例えばクロック動作周波数は1GHzが必須になる」(インフィニオン)。こうした高速プロセッサーは14/16nm世代以降の半導体プロセスで造る必要があるが、14/16nm世代以降の半導体プロセスではプロセッサーへNANDフラッシュメモリーを内蔵させることが難しい。NANDフラッシュメモリーに代わって相変化メモリーやMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)を内蔵する試みはあるものの、決定打は見つかっていない。
Infineonが新製品で狙うのは、14/16nm以降の半導体プロセスで造るセントラルプロセッサーやゾーンプロセッサーである。NANDフラッシュが内蔵されないため、代わりに新製品のNORフラッシュメモリーが外付けされると期待している(図2)。そこで、外部インターフェースはNORフラッシュでよく使われているSPI系ではなく、LPDDR4を採用した。LPDDR4は、ノートPCのマイクロプロセッサーやスマートフォンのSoCとSDRAMの接続に広く使われているインターフェースである。インフィニオンによれば、一般的なLPDDR4型SDRAMに比べて、LPDDR4型NORフラッシュメモリーのSEMPER X1は、トレーニング時間やランダム・リード・トランザクション、データバス効率といった点で優位だという(図3)。