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 大気汚染と騒音という都市部の生活者にとっての2つの課題に取り組むために設計した――。英Dyson(ダイソン)は2023年5月23日、空気清浄機能が付いたヘッドホン「Dyson Zone」を、日本で同日より発売すると発表した(図1)。標準モデルの直販価格は12万1000円(税込み)である。

図1 空気清浄ヘッドホン「Dyson Zone」
図1 空気清浄ヘッドホン「Dyson Zone」
ヘッドホンの重さは本体が595g、口と鼻に空気を届ける「シールド」着用時は670gである。寸法は高さ200mm×幅240mm×奥行き210mm。海外では既に、2023年1月から中国で、3月から英国や米国などで販売を開始している(写真:日経クロステック)
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 Dyson Zoneは、高性能なアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を搭載して外部の騒音を遮断し、没入感のある音楽再生を実現すると同時に、空気清浄機能によって着用者の口と鼻に清浄された空気を届ける。都市部の生活者が通勤・通学などで街を歩いたり、通勤電車などに乗っている際などに利用することを想定している。

 空気清浄機能は、ヘッドホンを装着した状態で、口と鼻に空気を届ける「シールド」と呼ぶ非接触型の部品を取り付けて使う。ヘッドホンのイヤーカップ(耳を覆う部分)にはコンプレッサーを内蔵する(図2)。コンプレッサーが最大9750rpm(回/分)で回転して空気を吸い込み、2層のフィルターで浄化した後、シールドの口元部分から口と鼻に向けて浄化した空気を送り出す。吸い込む空気量は毎秒最大2.25リットルである。

図2 Dyson Zoneの内部構造を説明する模型
図2 Dyson Zoneの内部構造を説明する模型
イヤーカップに外気を取り込むコンプレッサーや2層のフィルターなどを内蔵する(写真:日経クロステック)
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 1層目の静電フィルターはサイズが0.1μmの微粒子を99%捕集する。そして2層目のカリウム(K)を含んだカーボンフィルターで揮発性有機化合物(VOC)や二酸化窒素(NO2 )、二酸化硫黄(SO2 )などの酸性ガスを吸収する。

 ヘッドホンへのシールドの装着は、磁石を介して接続部を見ずにでき、シールドを口元に持ってくると空気清浄機能が自動的にスタートする。そして、シールドを下に傾けると「会話モード」が起動して、空気清浄と音楽再生が一時停止する。

 Dyson Zoneは、通常のヘッドホンと異なり、イヤーカップ内にモーターが高速回転するコンプレッサーを搭載する。モーターが発生する音や振動をなるべくユーザーに伝えないように、ターボ機械、流体力学、音響学を専門とするエンジニアの知見を集結し、空気の流路を最適化したという。

 ダイソンではDyson Zoneの空気清浄機能の効果を確認するために、呼吸するマネキン「フランク」を使用して性能テストを実施した(図3)。

図3 呼吸するマネキン「フランク」で効果を検証
図3 呼吸するマネキン「フランク」で効果を検証
医療グレードの人工肺と微粒子を吸引したことを検知する機能を持つこのマネキンで、Dyson Zoneの空気清浄機能の効果を検証したという(写真:日経クロステック)
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 フランクは医療グレードの人工肺と微粒子を吸引したことを検知する機能を持つ。開発中の空気清浄ヘッドホンを装着しながら汚染された空気を吸い込むテストを試験室で実施した。具体的には、微粒子を試験室に放出し、フランクの人工肺に到達する粒子のろ過効果を測定した。