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H3ロケット打ち上げの予想図
H3ロケット打ち上げの予想図
JAXAが公開したCG画像(出所:JAXA)
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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工は2021年1月23日、開発中の国産次世代主力ロケット「H3」の試験1号機を公開した。公開した機体は三菱重工・名古屋航空宇宙システム製作所・飛島工場(愛知県飛島村)で製造されたH3ロケット初号機で1月26日に同工場から出荷、JAXAの種子島宇宙センターへと運ばれ、2021年度中を予定する打ち上げに備える。

公開されたH3初号機の機体
公開されたH3初号機の機体
2021年1月23日に三菱重工・名古屋航空宇宙システム製作所・飛島工場(愛知県飛島村)で公開された(撮影:松浦 晋也)
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H3ロケットの成功が望まれる背景

H3ロケット
H3ロケット
現行の主力ロケットH-IIA/Bよりも機体や、積載物を収容する衛星フェアリングを大型化。全長は約63m。コアロケットの直径は約5.2mだ(出所:JAXA)
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 H3ロケットは日本の宇宙関連ビジネスの将来を左右する重要なピースだ。これが成功するか否かで、世界で急速に進む宇宙関連ビジネスの最前線に日本が挑戦できるか否かが決まると言っても過言ではない。その背景には宇宙関連ビジネスが抱える「ロケット不足」がある。

 人工衛星を宇宙へ運ぶロケットが足りない――。人工衛星ビジネスを手掛ける企業からのこうした声が強まっている。エレクトロニクス技術の発展などで小型でも高性能、かつ安価な人工衛星が実現できるようになり、人工衛星を使ったビジネスが世界的に活況を呈しているからだ。国内でもアクセルスペース(東京・中央)やSynspective(東京・江東)、QPS研究所(福岡市)などのベンチャー企業がすでに自社で開発した人工衛星を打ち上げている。ロケットベンチャーのインターステラテクノロジズ(北海道・大樹町、以下、IST)は2020年12月人工衛星ビジネスの子会社「Our stars」を設立してこの分野に参入すると発表した。

 その一方で人工衛星を宇宙へ運ぶロケットの打ち上げ頻度は不足している。打ち上げが決まっても、期日通りには打ち上げられない事例も少なくない。宇宙ベンチャー企業が人工衛星を造っても、満足に打ち上げられなければ新ビジネスにつきものの試験や実験もままならず、事業をスタートできない。「低価格で安定したロケットを、もっと頻繁に打ち上げてほしい」。多くの宇宙ベンチャーがこう望んでいる。そうした声にも応え、世界の宇宙関連ビジネスの成否を握る「ロケット打ち上げ」という広大な市場で、日本の産業界がチャンスをつかむ土台を作る──。これがH3ロケットの担う役割なのだ。

 JAXAは現在、主力ロケットとして「H-IIA」を運用中だ。幅広いニーズに対応するために小型ロケットの「イプシロン」も用意している。また、JAXA以外に民間企業もロケットを開発。海外にもライバルが存在する。「H3ロケットとは何者なのか」。整理してみよう。