
低コストと高い信頼性、そして柔軟性という3つの柱を高いレベルで実現するため、H3ロケットではさまざまな新技術を導入している。それは、機体の各所に見て取れる。組み込まれた機器だけでなく、その製造方法、さらに打ち上げを実施する射場でもH3は従来と一線を画す。今回は固体ロケットブースター「SRB-3」を取り上げる。
H3の固体ロケットブースター「SRB-3」は、第1段機体への取り付け方法を一新した。第1段機体の一番下には、打ち上げ時の推力を受け止める構造体があり、第1段エンジンはこの構造体に取り付けられる。打ち上げ初期の推力を増強する固体ロケットブースターも、この構造体に取り付ける必要がある。
H-IIA/Bの固体ロケットブースター「SRB-A」は、上端のモーターキャップという部材から、打ち上げ時の推力を第1段の構造体に伝える。このため、モーターキャップと構造体を結んで推力を伝達する2本のスラストストラットと、ブースターを位置決めして固定する前後のブレス、合計6カ所で第1段に固定していた。燃焼終了後はこの6カ所全てを火工品(火薬を使った分離装置)で切断して切り離す。
対してH3のSRB-3は、ブースター下部に丈夫なスラストピンという固定用のピンを持ち、このピンを第1段最下部の構造体に差し込むことで固定する。その他には細い補助的な位置決め用のブレスがあるだけだ。構造が簡単になり、第1段との接続部位が減ったので、取り付けの手間は大きく短縮された。8個あった火工品は3個まで減り、同時にコストダウンにも寄与している。
この設計変更が可能になったのは、固体ロケットブースターのモーターケースをイチから設計し直したからだ。