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 低コストと高い信頼性、そして柔軟性という3つの柱を高いレベルで実現するため、H3ロケットではさまざまな新技術を導入している。それは、機体の各所に見て取れる。組み込まれた機器だけでなく、その製造方法、さらに打ち上げを実施する射場でもH3は従来と一線を画す。今回は電動バルブについて取り上げる。

 H3ロケットのメインエンジン「LE-9」は、液体酸素、液体水素配管などの主なバルブを電動モーターで駆動する設計になっている。このため、エンジン運転中もバルブの開度の調節が可能だ。この設計の目的は打ち上げの途中で出力を絞れるようにするためだが、それだけではないさまざまな恩恵をLE-9にもたらしている。

電動バルブの構造
電動バルブの構造
燃料と酸化剤の流量を変化させてエンジン出力を調整できるため、打ち上げ末期に出力を絞って搭載ペイロードへの負荷を軽減することが可能になった。さまざまな条件の試験を効率的に行え、自動点検によって製造期間や整備期間の短縮にも寄与する。(出所:三菱重工、JAXA勉強会資料)
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打ち上げ時の出力調整でペイロードに優しく

 アクセルで出力を調整する自動車のエンジンとは異なり、ロケットエンジンは出力100%で使い、出力の調節をしないという設計がほとんどだ。ぎりぎりまでの軽量化を要求されるロケットエンジンは、見かけ以上に“やわ"で、各部が共振しやすい。出力調節ができるように設計すると、振動の周波数が変化するので、共振を避ける設計が複雑になる。

 しかし、ロケットエンジンであっても、出力の調節ができたほうが望ましい。例えば打ち上げ時のエンジン燃焼末期だ。どんどん搭載推進剤を消費していくので、機体が軽くなって、出力が一定だと加速度が大きくなっていく。搭載ペイロードにかかる荷重を軽減するには、エンジン出力を絞って加速度を小さく出来るほうが良い。

 このような事情があり、またコンピューター・シミュレーションの発達で振動解析が容易になってきたことから、最近は出力調節ができるロケットエンジンが増えている。LE-9もこの流れに乗った設計となっているわけだ。エンジン出力は、推進剤の単位時間当たりの流量で決まるので、推力調節のためには配管にバルブを入れて流量を調節する。