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低コストと高い信頼性、そして柔軟性という3つの柱を高いレベルで実現するため、H3ロケットではさまざまな新技術を導入している。それは、機体の各所に見て取れる。組み込まれた機器だけでなく、その製造方法、さらに打ち上げを実施する射場でもH3は従来と一線を画す。今回はアビオニクス(電子機器)で採用された自動車用部品について取り上げる。

 H3のアビオニクスは、そのほとんどの部品を自動車用電子部品から採用している。これは宇宙機としてはかなり画期的だ。部品点数で約90%が自動車用部品となっている。

宇宙機用部品は高信頼性故に高価格

 ロケットや衛星などの宇宙機は、高加速度、高温高圧、高真空などの厳しい条件下で確実な動作が求められるために、信頼性の確保を第一に設計される。システム全体の信頼性は個々の部品の信頼性で決まるので、個々の部品レベルでは非常に高い信頼性が必須となる。

 部品レベルでの高信頼性を確保するために、宇宙用の部品は開発段階で厳しい環境試験に実施して壊れない設計を徹底する。完成した部品は、宇宙での使用に耐える宇宙用部品としての認定を受け、以後の宇宙機では認定を受けた部品を使用することで信頼性を確保する。

 認定された部品を製造する際には履歴を厳密に記録し、トレーサビリティーを徹底的に確保する。宇宙機の事故は、残骸などの物的証拠が残りにくい。このため、事故が発生した場合に、書類の調査だけで原因を絞り込めるようにするためだ。

 この信頼性第一の開発と製造の手法には課題もある。部品への技術革新を遅らせ、価格高騰の原因ともなるからだ。開発時に徹底した試験を課して認定を取得する時間とコストは大きいため、どうしても同一の部品が長期間にわたって使われ続けることになり、新技術の導入が遅れる。また、トレーサビリティーの確保にも多大な人的コストがかかる。

 その結果、宇宙機用部品の価格は同等性能の他の民生部品と比べて、非常に高くなる。2桁以上、場合によってはそれ以上の価格になることもある。