全2602文字

低コストと高い信頼性、そして柔軟性という3つの柱を高いレベルで実現するため、H3ロケットではさまざまな新技術を導入している。それは、機体に組み込まれた機器だけでなく、その製造方法、さらに打ち上げを実施する射場でもH3は従来と一線を画す。今回は射場における最終的な組み立てや打ち上げ準備などでの取り組みを紹介する。

 ロケットの運用コストは、大まかに製造コストと輸送や射場での組み立て・打ち上げのためのオペレーションコストに区別される。H3はオペレーションコストもH-IIA/Bに比べて圧縮できるように機体を設計している。

 オペレーションコストの基本は、準備に必要な時間の短縮だ。準備期間が短くなれば、それだけ作業者の人件費が下がる。射場でのオペレーションは、[1]組み立て[2]点検[3]衛星搭載[4]打ち上げ[5]射場設備点検・補修、に大別される。H3ではこの全てを短縮しつつ低コスト化することを狙っている。種子島宇宙センターにおける組み立てと点検作業は、H-IIA/Bの約1カ月に対して、H3では半月まで短縮することになっている。

発射台の上面をフラットにして打ち上げ後の補修を不要に

 地味だが整備コストに大きく効く改良として、H3用発射台は、上面を完全にフラットにして発射台設備が直接噴射を浴びないようにした。

H3ロケット用の移動発射台
H3ロケット用の移動発射台
上面をフラットにするなど、H3ロケット用に新規開発した(出所J:JAXA)
[画像のクリックで拡大表示]

 従来のH-IIA/B用発射台は、下に噴射ガスを逃がす開口部が狭く、エンジン点火時に強い音響振動が発生していた。音響振動は搭載ペイロードをも揺らすので、発射台上面に散水設備を設置していた。水の噴射で音響振動を緩和する仕組みだ。ただし、散水設備は打ち上げ時に、第1段エンジンと固体ロケットブースターからの高温ガスの噴射にさらされるため、打ち上げ後の射点設備整備作業で、補修や交換が必須だった。

 H3の発射台では、開口部を大型化し、かつロケットを載せる位置を発射台上面より下に下げた。これにより発生する音響振動は、開口部から吸い込まれる空気と共に排煙口へと抜けていき、ロケット側への戻りが少なくなる。散水設備は不要となり、発射台上面がフラット化された。

図 発射台の上面
図 発射台の上面
左が従来(H-IIA/B)の発射台、右がH3の発射台。上面の開口部を大型化し、台の上面には設備が露出しないように改良した(出所:JAXA)
[画像のクリックで拡大表示]

電子機器のネットワーク化で打ち上げ前の点検時間を短縮

 アビオニクス(電子機器)のネットワーク化は、射場における組み立て期間の短縮を目指したものでもある。

 アビオニクスがネットワークになり、機体につなぐ配線本数は大きく減った。また、搭載機器の動作チェックも外部からネットワーク経由で行えるようになり、作業者がロケット内部に入って行う作業がなくなった。同時に機能試験自体の自動化も進め、一例として配管各部にあるバルブの点検は、H-IIA/Bは1日を要したものが、15分で行えるようになる。