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宇宙航空研究開発機構(JAXA)が「H3ロケット」の開発の進展に合わせて2本のビデオを公開した。「H3ロケット試験機1号機フライトシーケンスCG」と「H3ロケット/試験機の打上げを目指して」だ。いわば「2~3分で分かるH3ロケット」とも言うべきプロモーションビデオである。精緻なCGと実写を交え、H3ロケットの構成や仕組み、各部品の機能などを迫力ある映像で見せる。今回は2本のうち「H3ロケット試験機1号機フライトシーケンスCG」を、科学技術ジャーナリストの松浦晋也氏が解説する。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2021年1月21日に公開したビデオ、「H3ロケット試験機1号機フライトシーケンスCG」は、「H3ロケットとは何か」を映像で見せる3分弱のビデオだ。特に、移動発射台でH3ロケット本体を射点に移送する場面から発射、人工衛星の分離までのフライトシーケンス(打ち上げシーケンス)をリアルなCGで映像化しており、H3に限らずロケットによる人工衛星打ち上げを理解するにはうってつけだ。

[1]H3ロケットの打ち上げシーケンス

 JAXAが今回、公開した2本のビデオの中でも目玉と言えるのがこのH3ロケットの打ち上げシーケンス部分だ。H3ロケットはJAXA種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)の大型ロケット発射場から打ち上げる。

JAXA種子島宇宙センター(出所:JAXA)
JAXA種子島宇宙センター(出所:JAXA)
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 この発射場は、H-IIロケット(1994年~99年に7機を打ち上げた)の開発に当たって、新たに建設された射点設備だ。その後、改修を重ねてH-IIAとH-IIBを打ち上げてきた。射点建設に当たって立ち退いた集落の名前をとって「吉信(よしのぶ)射点」とも呼ばれる。

JAXA種子島宇宙センターの大型ロケット発射場(出所:JAXA)
JAXA種子島宇宙センターの大型ロケット発射場(出所:JAXA)
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 上昇を開始したH3ロケットは、まず固体ロケットブースター、次に衛星フェアリング、そして第1段と、役割を終えた部分を切り離して投棄していく。少しでもロケットを軽くして、限られた推進剤でより速く、遠くに到達するためだ。コア機体が2段式になっているのも、機体を軽くして加速性能を高めるためである。

固体ロケットブースターを分離(出所:JAXA)
固体ロケットブースターを分離(出所:JAXA)
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衛星フェアリングを分離(出所:JAXA)
衛星フェアリングを分離(出所:JAXA)
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人工衛星の投入(出所:JAXA)
人工衛星の投入(出所:JAXA)
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 このCGでは、衛星を分離した後の第2段が姿勢を制御して逆噴射し、大気圏に再突入している。第2段は、衛星と同じ軌道に入るので、放置するとそのまま地球を回り続けて、宇宙ゴミとなる。

第2段が姿勢を制御して逆噴射し、大気圏に再突入(出所:JAXA)
第2段が姿勢を制御して逆噴射し、大気圏に再突入(出所:JAXA)
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 そこでH3ロケットでは第2段を逆噴射で再突入させ、できる限りゴミにしないような運用を導入した。この運用は、H-IIBロケットでの宇宙ステーション補給機「こうのとり」の打ち上げで試験的に実施して、実績を積み重ねてきた。H3では可能な範囲内で第2段を地球に落とす。静止トランスファー軌道への打ち上げや、惑星間軌道への打ち上げのように、第2段を逆噴射させても地球に落ちない軌道に入る場合には、従来通り第2段は宇宙に留め置かれる。