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宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業などが開発中の次期基幹ロケット「H3」。その打ち上げ準備の山場とも言える「極低温点検」が2021年3月17〜18日、鹿児島県の種子島宇宙センターで実施された。組み上げられたH3ロケットが初めて、公に姿を現したことになる。その点検の様子を、科学技術ジャーナリストの松浦晋也氏が、写真を交えて解説する。

 極低温点検では、ロケット本体を射点設備に組み合わせ、極低温推進剤を充塡して打ち上げのリハーサルを行い、射点設備および通信など打ち上げ支援設備との整合性を点検した。ロケットの全体システム開発最大の山場であり、この点検をパスすれば、ロケット打ち上げのシステムはほぼ完成したことになる。

 試験は豪雨に見舞われ、スケジュールは当初予定より大きく遅延した。荒れる天候とは対照的に点検結果は良好で、14年に始まったH3の開発は、21年度中を予定している初号機打ち上げに向けて大きく前進した。

2021年2月初旬から、種子島宇宙センター吉信射点の機体組立棟(VAB)では、H3の点検用組み立てが進められた。横倒しで搬入された第1段機体をVABのクレーンでつり上げて直立させる。第1段エンジンのLE-9は開発が続いていたため、装着されているのは燃焼試験に使われた試験用のエンジン。(出所:JAXA)
2021年2月初旬から、種子島宇宙センター吉信射点の機体組立棟(VAB)では、H3の点検用組み立てが進められた。横倒しで搬入された第1段機体をVABのクレーンでつり上げて直立させる。第1段エンジンのLE-9は開発が続いていたため、装着されているのは燃焼試験に使われた試験用のエンジン。(出所:JAXA)
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第1段の上に、段間部、第2段と順に積んでいく。縦のストリンガーが入っている部分が段間部。第2段は後ろ半分のエンジンと液体酸素タンクが段間部にすっぽり収まるので、この写真では上部の液体水素タンクだけが見えている。(出所:JAXA)
第1段の上に、段間部、第2段と順に積んでいく。縦のストリンガーが入っている部分が段間部。第2段は後ろ半分のエンジンと液体酸素タンクが段間部にすっぽり収まるので、この写真では上部の液体水素タンクだけが見えている。(出所:JAXA)
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今回の点検に使用した衛星フェアリング(搭載衛星を保護する覆い)は、2019年12月の「フェアリング分離放てき試験」に使用した開発用モデル。実機は白色に塗装するが、このモデルは未塗装で、黒色の炭素系複合材料の地肌が露出している。H3が黒いフェアリングを装着するのは今回のみ。(出所:JAXA)
今回の点検に使用した衛星フェアリング(搭載衛星を保護する覆い)は、2019年12月の「フェアリング分離放てき試験」に使用した開発用モデル。実機は白色に塗装するが、このモデルは未塗装で、黒色の炭素系複合材料の地肌が露出している。H3が黒いフェアリングを装着するのは今回のみ。(出所:JAXA)
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第1段に固体ロケットブースター「SRB-3」を2本装着する。この点検では実際に初号機打ち上げに使用するSRB-3を使用した。第1段側面の「JAPAN」の文字はH-IIAまでは「NIPPON」だった。商業打ち上げ市場を意識し、世界にアピールするという理由からH3からは「JAPAN」に変更されている。(出所:JAXA)
第1段に固体ロケットブースター「SRB-3」を2本装着する。この点検では実際に初号機打ち上げに使用するSRB-3を使用した。第1段側面の「JAPAN」の文字はH-IIAまでは「NIPPON」だった。商業打ち上げ市場を意識し、世界にアピールするという理由からH3からは「JAPAN」に変更されている。(出所:JAXA)
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2021年3月17日早朝、VABの扉が開き、H3が姿を現した。しかし、時折強まる降雨のために機体の射点への移動開始は予定の午前6時30分から6時51分に遅れた。(出所:JAXA)
2021年3月17日早朝、VABの扉が開き、H3が姿を現した。しかし、時折強まる降雨のために機体の射点への移動開始は予定の午前6時30分から6時51分に遅れた。(出所:JAXA)
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午前6時51分、晴れないもやとやまない雨の中、機体移動が始まった。報道陣の前にH3が姿を現す。フェアリング頂部とVAB扉開口部のクリアランスがぎりぎりなのに注意。VABは1994年に運用を開始したH-IIロケットのために建設され、H-IIA、H-IIBとロケットが変わるたびに改築を重ねてきた。しかし、大型化したH3ではぎりぎりのサイズになっている。当初H-IIは1992年の運用開始を予定していたので、VABは既に建築後30年を経ている。(撮影:松浦晋也)
午前6時51分、晴れないもやとやまない雨の中、機体移動が始まった。報道陣の前にH3が姿を現す。フェアリング頂部とVAB扉開口部のクリアランスがぎりぎりなのに注意。VABは1994年に運用を開始したH-IIロケットのために建設され、H-IIA、H-IIBとロケットが変わるたびに改築を重ねてきた。しかし、大型化したH3ではぎりぎりのサイズになっている。当初H-IIは1992年の運用開始を予定していたので、VABは既に建築後30年を経ている。(撮影:松浦晋也)
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VABから離れ、射点へと移動するH3。運用開始後のH3の発展・改良を考えると、H3完成後はVABのさらなる増築、ないしはより大型施設への建て替えが必須となるのは間違いない。吉信射点は海に突き出した岬に立地しているので、塩害による施設の劣化も激しい。補修はしているものの、どこかのタイミングで根本的対策が必要だろう。(撮影:松浦晋也)
VABから離れ、射点へと移動するH3。運用開始後のH3の発展・改良を考えると、H3完成後はVABのさらなる増築、ないしはより大型施設への建て替えが必須となるのは間違いない。吉信射点は海に突き出した岬に立地しているので、塩害による施設の劣化も激しい。補修はしているものの、どこかのタイミングで根本的対策が必要だろう。(撮影:松浦晋也)
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移動するH3。H3を搭載した移動発射台「ML5」および移動に使う2台のドーリーは共にH3のために新たに建造された。H3は移動発射台上面からめり込む形で搭載されているのが分かる。これは噴射が上面構造物に与える影響を小さくするため。同時にここまで下げないと大きくなったロケットがVABに収まらなかったのだ。(出所:JAXA)
移動するH3。H3を搭載した移動発射台「ML5」および移動に使う2台のドーリーは共にH3のために新たに建造された。H3は移動発射台上面からめり込む形で搭載されているのが分かる。これは噴射が上面構造物に与える影響を小さくするため。同時にここまで下げないと大きくなったロケットがVABに収まらなかったのだ。(出所:JAXA)
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ほぼ同じ方向から見たH-IIBロケット。固体ロケットブースターに注目して比較すると、H-IIBが移動発射台上面に載っているのに対して、大型化したH3が移動発射台にめり込む形で載っているのがはっきり分かる。(出所:JAXA)
ほぼ同じ方向から見たH-IIBロケット。固体ロケットブースターに注目して比較すると、H-IIBが移動発射台上面に載っているのに対して、大型化したH3が移動発射台にめり込む形で載っているのがはっきり分かる。(出所:JAXA)
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H3を打ち上げる第2射点に向かうためには、一度向きを変えて斜めに移動する必要がある。吉信射点には、H-IIAが使用する第1射点とH-IIBが使用していた第2射点がある。H3は第2射点を改修して使用する。H-IIAの運用終了後、第1射点は運用停止になる予定。(撮影:松浦晋也)
H3を打ち上げる第2射点に向かうためには、一度向きを変えて斜めに移動する必要がある。吉信射点には、H-IIAが使用する第1射点とH-IIBが使用していた第2射点がある。H3は第2射点を改修して使用する。H-IIAの運用終了後、第1射点は運用停止になる予定。(撮影:松浦晋也)
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射点に到着した移動発射台とH3。(出所:JAXA)
射点に到着した移動発射台とH3。(出所:JAXA)
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VABと射点に到着したH3を遠望する。(撮影:松浦晋也)
VABと射点に到着したH3を遠望する。(撮影:松浦晋也)
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