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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2022年11月7日、種子島宇宙センターで次期主力ロケット「H3」の1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)を実施した。ロケット打ち上げ前の最終試験に当たるCFTは成功に終わり、打ち上げに向けて必要なデータを取得できた。CFTの舞台裏やH3初号機打ち上げについて、JAXA H3プロジェクトマネージャの岡田匡史氏に聞いた。(聞き手は松浦晋也=ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト)

JAXA H3プロジェクトマネージャの岡田匡史氏
JAXA H3プロジェクトマネージャの岡田匡史氏
(写真:大塚 実)
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H3ロケットの1段実機型タンクステージ燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)は「25秒」という、エンジン燃焼試験としては短い時間の試験でした。この秒数はどのようにして決めたのでしょうか。

岡田 必要なデータを取得できる燃焼時間と、燃焼による射点施設への影響とのバランスを検討して決めました。

 ロケットは本来、エンジンに点火したらすぐに飛んで行ってしまいます。CFTは、そんなロケットを発射台に固定して実施する燃焼試験です。飛び去るはずのロケットを固定すれば、当然そのエンジンは同じ場所で連続して燃焼し続けます。すると、噴射時の音響や振動が射点施設に悪影響を与えたり、場合によっては壊したりすることもあり得ます。

 ですから、射点施設への影響を考えるとCFTの燃焼時間は短いほうがいい。しかし、燃焼時間が短すぎると、必要とするデータを取得できません。必要なデータを取得して、射点施設への影響を極力抑えるバランスを取らなければならないのです。

 そこで、必要性の高さで優先順位をつけてCFTで取得すべきデータを選択し、そのデータを得るのに必要な燃焼時間を検討します。こうした検討の結果、25秒間という燃焼時間が決まりました。

CFT実施から一夜明けて、機体組立棟(VAB)への格納を待つH3ロケット
CFT実施から一夜明けて、機体組立棟(VAB)への格納を待つH3ロケット
(写真:大塚 実)
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今回のCFTの後、ロケットは発射台から下ろして点検するのでしょうか。

岡田 いいえ、下ろしません。発射台に載せた状態で点検して、初号機打ち上げに向けて組み立てと整備に進みます。次にロケットが発射台を離れるのは、初号機として上昇を始めるときです。