全3053文字
PR
特別養護老人ホーム 竜爪園(写真:松村 芳治)
特別養護老人ホーム 竜爪園(写真:松村 芳治)
[画像のクリックで拡大表示]

 敷地いっぱいに建つ平屋建ての3棟の居住棟内部には、ムクの木材がふんだんに使われている。構造材を含め、その多くが県産材だ。木造とすることを提案したのは、設計者の北村陸夫+ズーム計画工房。しかし、特別養護老人ホームでの前例は、設計時点では1件しかわかっていなかった。この試みを全面的に受け入れた発注者、それに地元の森林組合、施工者らの協力によって実現した。

 2002年4月にスタートした竜爪園の増床計画では、まず4社によるプロポーザルが実施された。課題は3点。既存の施設からの周囲の山並みに向けた眺望を確保すること、時代の変化に対応できる施設とすること、そしてコストの削減だった。

 提案の多くは、敷地の両サイドに中層の施設を配置して眺望を確保した。これに対して北村氏は、「RC造で4、5階建ての案も検討したが、施設ではなく生活の場にしたいと考え、木造平屋建てにした。落選覚悟の提案だった」と振り返る。結果は「審査員の全員一致で、2位とは2倍以上の点差での当選だった」と、竜爪園を運営する社会福祉法人天心会の安池倫成理事長は打ち明ける。