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 意表を突いたものに出くわすと、思わず笑ってしまうことがある。ここはまさにそんな場所だ。ウェブサイトの制作を中心にしたIT(情報技術)企業、カヤックの新オフィス。神奈川県鎌倉駅前の、若宮大路の途中、ビルの2、3階を占める。

 エレベーターの扉が開くと、そこはもうオフィスだ。アプローチ自体がそもそも意表を突いているのだが、さらに目の前に広がるのは、およそオフィスらしからぬ畳である。天井の高い白い室内に、巨大なテーブルがあって、社員がぐるりと囲んでパソコンに向かう。

 テーブルの中央は畳仕上げになっていて、そこでは打ち合わせをしている。なかには、掘りごたつ式に座れる場所もある。言い方を変えればテーブルは同時に座敷でもあり、座敷の端の縁側のところを机代わりにして、パソコンに向かっているのだ。

2階のオフィス。畳とシャンデリア、ガラス間仕切りにちゃぶ台。キッチュにならないようにうまくバランスを取っている (写真:阿野 太一)
2階のオフィス。畳とシャンデリア、ガラス間仕切りにちゃぶ台。キッチュにならないようにうまくバランスを取っている (写真:阿野 太一)
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 設計はクライン ダイサム アーキテクツ。アストリッド・クライン氏は「カヤックが面白い会社だから、それならこちらも面白いことをやってあげたいと思った」と説明する。ウェブの仕事はじっと机に向かって働く。しかも長時間に及ぶ。そんな過酷な仕事だからこそ、仕事をする場所は楽しく、リラックスできるような雰囲気にしたかったという。

 さらに同社の代表である柳澤大輔氏から、せっかく鎌倉にいるので鎌倉らしい要素を取り入れたいという要望があった。「海」や「和」といったキーワードで話を進めるうち、どちらからともなく「畳テーブル」のアイデアが出てきた。

もともと高い天井を生かして、場所に応じていろいろな高さを体験できるようになっている (写真:阿野 太一)
もともと高い天井を生かして、場所に応じていろいろな高さを体験できるようになっている (写真:阿野 太一)
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 「畳はリラックスアイテム」と言うクライン氏。しかし同時に“怖い”材料でもあるという。「あまりに和を象徴するから、よほど気を付けてバランスを取らないと、伝統の和室になってしまう。だから畳を使うならば、それに負けない“びっくりエレメント”をぶつける必要があった。IT企業のオフィスだからできた面白さだ」(クライン氏)。畳とIT。十分にびっくりエレメントである。