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 2020年10月1日に東京証券取引所の株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」で発生したシステム障害では、システム開発ベンダーとの開発の在り方も指摘された。

 東証を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)でCIO(最高情報責任者)を務める横山隆介常務執行役は今回の障害を踏まえ、今後のシステム開発ではレジリエンス(障害回復力)だけでなくアジリティー(敏しょう性)も重視する考えを示す。アジャイル開発やクラウドネーティブなシステム開発が増えていくなか、開発の実務を担うITベンダーとJPXとの関係性についても「変わっていく」と明言する。

横山 隆介(よこやま・りゅうすけ)氏
横山 隆介(よこやま・りゅうすけ)氏
1986年東京証券取引所入所。2009年ITビジネス部長、2011年執行役員。2017年日本取引所グループ常務執行役(現職)。2019年東京証券取引所取締役(同)。(写真:北山 宏一)
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 「ベンダー任せのベンダー頼りでは一級品の市場にはなれない」――。2020年10月1日のシステム障害を受けて設置された「システム障害に係る独立社外取締役による調査委員会」の委員長で日比谷パーク法律事務所代表の久保利英明弁護士はこう指摘した。経営資源をシステム関連へさらに投入し、JPX・東証内部のシステム設計能力や管理能力を強化するよう求めた。

 また同委員会が2020年11月30日に公表した調査報告書は、東証とarrowheadを二人三脚で作り上げてきた富士通側にも一定の責任があったと結論付けた。

ベンダーとの関係、大いに議論必要

横山常務執行役:

 これまで富士通は会社の中でarrowheadをトッププライオリティーに置いて、リソースを注ぎ、努力してくれたと思っています。その評価は変わりません。

 当社としてはこれまでと同様、今後も「発注者責任」を果たし、ベンダー任せにしないことが重要です。他社では要件定義から丸投げという例も少なくないと思います。我々は要件定義に責任を持つことはもちろん、基本設計や詳細設計などに対しても自分たちで見ています。テストに関しても、テストケースを自分たちで書くし、各工程の品質チェックなども厳しく実施していきます。そういう意味で、我々は発注者責任を十分に果たしながら、ベンダーとともに取り組んでいく。その姿勢は変わりません。

 一方で今後を考えると、ベンダーとの関係をどう変えていくべきかという点は、大いに議論する必要があります。例えばアジャイル開発をしようとすると、(ウオーターフォール開発では一般的な)要件定義をきっちりしたうえで、ベンダーに引き継ぐというプロセスそのものがなくなります。ユーザー側である我々の関与をどう考えるべきかなど、詰めなければいけない部分がたくさんあります。

 今回のシステム障害以前から、JPXのIT部門ではデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、従来のウオーターフォール開発に代わるアジャイル開発でのシステム開発を模索してきた。

 例えば、2021年2月1日に稼働したETF(上場投資信託)のオンライン取引プラットフォームである「CONNEQTOR(コネクター)」。米Microsoft(マイクロソフト)のクラウドサービス「Azure」を活用し、富士通などと組んで、JPXとして初めてアジャイル開発で進めた。

CONNEQTORのネットワーク概念図
CONNEQTORのネットワーク概念図
(出所:日本マイクロソフト)
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