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トヨタ自動車の実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の建設が2021年2月23日から始まる。注目すべきは、ソフトを中心にものづくりを変革する「ソフトウエアファースト」の考え方だ。スマートフォンの世界で常識となっている独自OS(基本ソフト)によるプラットフォーム支配の構図をクルマやスマートシティーの領域で確立できるのか、トヨタの手腕が問われる。

 「開発したソフトウエアやサービスを、さまざまなハードウエアプラットフォーム上に展開(デプロイ)できるようにする」。トヨタ自動車が進める実験都市「Woven City(ウーブン・シティ)」のソフト戦略を担当するウーブン・プラネット・ホールディングスCEO(最高経営責任者)のジェームス・カフナー(James Kuffner)氏はこう説明する(図1)。

図1 新たなソフト戦略で挑むWoven City
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図1 新たなソフト戦略で挑むWoven City
(a)Woven Cityのソフト戦略を担うウーブン・プラネットCEOのジェームス・カフナー氏。(b)静岡県裾野市に建設するWoven Cityのイメージ。(出所:トヨタ)

 Woven Cityでは、乗用車やMaaS(Mobility as a Service)車両、交通/充電インフラ、住宅、介護機器、ロボットなど、さまざまなシステムを駆使して社会課題の解決を目指す。その際、個々のハードごとにソフトを開発するのは効率が悪く、システム間の連携も難しい。そこで、「都市OS(基本ソフト)」のような共通のソフト基盤を導入し、ハードの違いを超えてアプリやサービスを開発、連携させる。Woven Cityの建設は2021年2月23日に静岡県裾野市で始まる。

 こうしたソフトを主軸とするアプローチは「SDA(Software Defined Architecture)」などと呼ばれ、IT業界では一般的だが、自動車や社会インフラなど、ハードとソフトが強く結びついた領域では新たな取り組みとなる。目指す方向性は、スマートフォン(スマホ)における米Apple(アップル)の「iOS」や米Google(グーグル)の「Android」などに近い(図2)。

図2 ハードとソフトが分離
図2 ハードとソフトが分離
スマホで起きた変化がクルマでも起きつつある。さらに都市レベルに広げることで社会課題の解決を目指す。(出所:日経Automotive)
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 スマホの場合は自前のOSを持つIT企業がプラットフォーマーとして躍進した半面、ハードの陳腐化が加速し、多くの携帯電話機メーカーが市場から撤退した。クルマも同じ道をたどる可能性が高い。自動車メーカーは車両を生産し販売する従来の事業モデルだけでは、かつての携帯電話機メーカーのように淘汰されかねない。トヨタはWoven Cityを通じて自前のOSを確立し、人々の生活に密着した新たなエコシステム(生態系)の主役になることを目指す。そのために「ソフトウエアファースト(ソフト第一)のものづくり」(トヨタ社長の豊田章男氏)へ転換を急ぐ。