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 2011年3月の東日本大震災から、間もなく10年が経過する。この10年の間に様々な新しいテクノロジーが登場したが、それらは防災や減災にどれぐらい活用されているのだろうか。災害対応ITの最新事情を追う本特集の第3回では携帯電話ネットワークの防災関連技術を取り上げる。

 携帯電話は救援・救助活動や被災者の安否確認、避難生活、災害復旧などを支える「命綱」だ。ところが東日本大震災では、基地局の倒壊や長時間停電、基地局までの伝送路の切断などにより、携帯電話事業者各社の通信サービスが一斉に止まった。総務省によると携帯電話とPHSは最大約2万9000の基地局が機能を停止し、固定電話は最大約100万回線が不通となったという。そんな苦い教訓を踏まえ、各社は「つながる」ネットワークを維持する様々な技術を磨いてきた。

上空100メートルにドローン基地局

 代表的な取り組みの1つが多彩な臨時基地局の開発である。一般の基地局はビルや鉄塔、山など高所に設置して固定する。そうした常識を破り、陸・海・空の様々な場所に基地局を配置して通信が途絶えた地域をエリア化する。アンテナやパワーアンプなど基地局を構成する装置の小型化が近年急速に進み、開発に拍車がかかっている。

 例えばソフトバンクが2020年8月末に報道公開したのは、上空100メートルに浮かんで半径約10キロメートルの範囲に携帯電話の電波を飛ばせるドローンだ。20メガヘルツ幅の周波数を使いLTE方式で通信する場合、圏内では最大2000人程度の同時通話や毎秒150メガビットのデータ通信ができるという。ドローンの開発に携わった藤井輝也東京工業大学工学院特任教授は「1つの基地局がそのまま空に上がったようなものだ」と話す。

ソフトバンクが開発中のドローン基地局
ソフトバンクが開発中のドローン基地局
(撮影:日経クロステック)
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 もともとソフトバンクは気球を使った臨時基地局を開発し、2012年から実証実験を続けてきた。2016年の熊本地震では福岡県と熊本県の阿蘇方面をつなぐ山間ルートに気球基地局を係留し、電波状況を改善して復旧支援活動を支えた。ただし気球は現地到着後にガスを注入するなどの手間がかかるため、基地局として運用を開始するまでに6~12時間程度要する点が課題だった。

 これに対して同社が今回開発したドローン基地局は、現地に到着して1時間以内に運用できるのがポイントだ。バッテリーを使って飛行する場合の滞空時間は30分程度だが、地上から電力ケーブルで給電することにより24時間連続での飛行を可能にした。これにより基地局として1週間程度の連続運用を見込めるという。NTTドコモやKDDIも含め、携帯各社がドローン基地局の実用化に向けた技術開発や運用ノウハウの確立に力を注いでいる。