全3078文字
PR

空から撮影した画像で被災状況を確認する技術も、10年前と比べ格段に進歩した。災害発生から数日はかかっていた確認作業が、数時間レベルに短縮した。観測衛星の活用やSNS分析技術の向上が背景にある。

 建物や道路、通信回線、送電網などインフラの被災状況の確認には、10年前なら災害発生から数日はかかっていた。それが現在は、観測衛星やドローンを活用することによって、数時間レベルにまで短縮している。

 NTT東日本は2020年10月から、通信回線の被災状況を衛星画像とAI(人工知能)を使って最短半日で把握できる態勢を整えた。NTTデータが提供する衛星画像を活用した被災状況把握ソリューションを使用する。

図 NTT東日本が導入した被災状況把握システムのイメージ
図 NTT東日本が導入した被災状況把握システムのイメージ
AIが衛星写真から被害箇所を抽出(写真提供:NTTデータ)
[画像のクリックで拡大表示]

 台風や地震などが発生すると、NTTデータが観測衛星を運営する事業者に、NTT東日本の重要な通信回線がある地域を撮影するよう依頼する。そして撮影した最新の衛星画像と、あらかじめ撮影した衛星画像とをAIが比較。浸水域や土砂崩落エリアを特定する。あらかじめ撮影した衛星画像には、NTTデータとリモート・センシング技術センターが共同で提供する高精度デジタル地図サービスの「AW3D」を使用する。

 従来は衛星で特定エリアを撮影するには、衛星会社へ事前に撮影を予約する必要があり、撮影完了まで1カ月を要することもあった。NTTデータは2020年4月から米マクサー・テクノロジーズと提携し、マクサーの観測衛星に撮影指示を直接出せるようにした。これによって撮影エリアを指定してから撮影を完了するまでの時間は30時間ほどにまで短縮した。

 台風など気象災害の場合は、被災エリアは事前に予測できる。台風が来る前に撮影エリアを指定し、台風通過直後に衛星画像を撮影するよう設定しておけば、水害発生から最短半日で被災状況を把握できるという計算だ。

 マクサーの衛星は2分間の撮影で、数千キロメートルの範囲を撮影できる。解像度は30センチメートルで、建物1棟単位の被災状況が把握できるレベルだ。ただし光学撮影なので、天候が悪いと撮影できない。そこでフィンランドの衛星会社であるアイサイが運用する合成開口レーダー衛星(SAR衛星)が撮影した画像も併用する。レーダーを使うと夜間や曇りでも地表の状態が撮影できるためだ。米国の衛星会社であるプラネット・ラブズの超小型観測衛星が撮影する画像も使用する。

 NTTデータ スマートビジネス統括部営業企画担当の大竹篤史部長によれば、この10年で衛星画像の活用は格段に容易になったのだという。民間の衛星会社が衛星網を急速に整備したからだ。例えばプラネット・ラブズは牛乳パックほどの大きさの小型観測衛星を160個ほど衛星軌道上に展開中だ。日本を毎日の頻度で撮影できる。かつて米国の衛星会社が撮影した解像度20インチ(約50センチメートル)以下の高精細画像は、米軍以外への販売が禁止されていた。その規制が2014年に緩和されたことも追い風となった。

 衛星画像が豊富に流通するようになったことで、デジタル地図であるAW3Dの解像度も2014年の10メートルが2019年には50センチメートルにまで改善した。デジタル地図の解像度が向上することで、AIによる被災状況の自動把握が可能になった。

災害発生から2時間で衛星画像撮影

 衛星を使って被災状況を把握する仕組みは日本政府も整備を進めている。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で開発する「被災状況解析・共有システム」で、災害発生から2時間で政府や自治体に対して必要な衛星データを提供することを目指している。完成は2022年の予定だ。