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 壁に直面する世界の情報処理基盤を、光技術によって塗り替えようというNTTの「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想。2030年をターゲットにした壮大な計画の実現に向けて陣頭指揮を執るのが、同構想の生みの親であるNTT代表取締役社長の澤田純氏だ。どのような情報通信の未来を描いているのか。澤田氏に聞いた。(聞き手は堀越 功=日経クロステック、中道 理=日経クロステック/日経エレクトロニクス)

NTT社長の澤田純氏。IOWN構想の生みの親だ
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NTT社長の澤田純氏。IOWN構想の生みの親だ
(撮影:加藤 康)

IOWN構想を公表した経緯や狙いを教えてください。

 まず当社を取り巻く経営環境として、大きく3つの課題がありました。

 1点目は、どうやって世界に対抗していくのかという点です。ITや通信に必要な機器やサービスの多くは、日本製ではなく海外製です。今のインターネットはスケールメリットを奪ったプレーヤーが総取りするモデルです。こうしたプレーヤーに対抗し、自社のビジネスを広げるには、何らかのゲームを変える要素が必要になると考えていました。

 2点目は経済安全保障の観点です。新型コロナウイルスの感染拡大で分かったように、世界でヒト・モノ・カネの流通が止まってしまうと、海外の技術や資源に頼った日本のままでは厳しい環境に陥ります。自分たちで技術を持ち、関連する業界でエコシステムを作って、自立していく必要があります。

 3点目は、人工知能(AI)のニーズが広がる中、今後とんでもないデータ量が飛び交う世界になるという点です。これらのデータを分析したり伝送したりするには、膨大なエネルギーが必要になります。今の半導体を使った処理がボトルネックであり、いずれムーアの法則が行き詰まることが見えていました。

 こうした課題を解決するシーズが、NTT研究所から生まれてきました。それが2019年4月に英学術誌「Nature Photonics」に掲載された、半導体を光化する光電融合技術です。この光半導体を活用することで、エネルギー消費の問題が解決でき、自社の技術でゲームを変えていけると考えました。この技術が十分条件となり、IOWN構想を世に出すきっかけになりました。

IOWNは、ネットワークから情報処理基盤までを革新しようという壮大な構想です。以前から広い分野の問題意識を持っていたのでしょうか?

 それぞれの分野で問題意識を持っていました。例えば究極の通信サービスを考えた場合、五感を越えたテレパシーのようなものになるでしょう。このようなサービスを考えた場合、「1人1波長」のリソース割り当てが必要になる時代が来ると考えていました。それを実現する基礎技術が、NTTの研究所にいくつもあると感じていました。

 ちなみに「1人1波長」の概念は、作家・エコノミストのジョージ・ギルダー氏が2000年代に書いた「テレコズム」という本の中で提唱したものです。