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 光信号と電気信号を融合する光電融合技術。NTT「IOWN」構想の鍵を握る技術だ。ステップ1がLSIなどの直近に光電融合モジュールの配置、ステップ2が光電融合技術をシリコン配線基板上(インターポーザー)に実装できるように小型化・高密度化するのに対し、最終形といえるステップ3はIOWN構想の商用化ターゲットである2030年以降を想定し、チップ内の一部の情報処理を光信号で担うようにしていく計画だ。

 最終形に向けた鍵になる技術が、ナノフォトニクス技術を用いた「ナノ受光器-ナノ変調器集積素子(OEO変換デバイス)」である。OE(光-電気)変換とEO(電気-光)変換の両機能を10µ×15µm2という微小サイズに収めた光電融合デバイスだ。「光デバイスはこれまで集積が困難だったため、CMOSの成長スピードに追い付けなかった面がある。今回この研究を通じて光デバイスを集積する手段を手に入れた」(NTT物性科学基礎研究所 ナノフォトニクスセンタセンタ長上席特別研究員(主幹研究員)の納富雅也氏)。

光のエネルギーだけで動作する光電融合デバイスを開発
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光のエネルギーだけで動作する光電融合デバイスを開発
受光したわずかな光だけで、内部で光―電気、電気―光変換ができる光電融合デバイスを開発した(図:NTTの資料を基に日経クロステックが作成)

 このOEO変換デバイスは「世界で初めてのフェムトファラド(fF)容量の光デバイス集積技術」(NTT)である。「静電容量を抑えて、小さな電流で動作するようにした」(同氏)。これによって非常に小さなエネルギーでデバイスが動作するようになった。

 実は現在のOEO変換デバイスは集積キャパシタンスが100fF以上、大きさが100µ×100µm 2以上のサイズで、集積性が低い。しかも受光器(OE部)は光信号を電気信号として回路に流すため、増幅器などで電圧を生み出す必要があり、どうしても大きなエネルギーが必要だった。

微小な光トランジスタで信号処理へ

 NTTが開発するOEO変換デバイスは、どのように動作をするのか。同デバイスは、微細加工によって周期的なナノ構造を施したフォトニック結晶と呼ばれる人工構造体を利用する。フォトニック結晶はその構造ゆえ、特定波長に対して光の絶縁体として機能し、一般的な物質では難しい光の閉じ込めが可能になる。

 OEO変換デバイスは、このフォトニック結晶に光の通り道を設け、入力光を通す場所に受光器(OE部)、連続光を通す場所に変調器(EO部)を設置し、その変調器下部に抵抗を置いている。連続光はOEO変換デバイス内の変調器を通過し続けており、変調を受けて出力光として外部へ出る。また受光器は受光機能のためにInGaAsを埋め込んでおり、変調器は変調機能のためにInGaAsPを埋め込んでいる。

OEO変換デバイスの動作イメージ
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OEO変換デバイスの動作イメージ
デバイスは受光器で光信号を受光すると、光信号の振幅に応じて電流が発生する。発生した電流に応じて、抵抗部の電圧降下が発生する。入力の振幅に応じた電圧で連続光に変調がかかる(図:日経クロステック)

 光信号を受けた際の動作は(1)~(4)の通りになる。(1)受光器が光信号を受け取る、(2)OE変換で受光器から電流が発生して回路に流れる、(3)電流が負荷抵抗に達して電圧が発生する(光起電圧)、(4)発生した電圧によって変調器で連続光を変調する、というもの。この動作だけで、OEO変換デバイスに入った入力光の波形が出力光に転写できる。

 さらに高い強度の連続光に入力光の波形を転写できれば、出力光の信号強度を入力光より高められる。つまり、同デバイスは信号利得がある光トランジスタとして役割を果たす。