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 ここに来てNTTだけでなく、光を情報処理に使おうという動きが世界で活発化している。特に活発化しているのが、光の伝搬を利用して演算を実行する「光ニューラルネットワーク」だ。

 簡単に言えば、光回路を演算用に調整し、光が通るだけで演算が完了する技術である。短い距離を光の速さで通過して演算するため、一部演算においてCPUなどのチップより高速なデータ処理を実現できる。「米マサチューセッツ工科大学(MIT)のグループが論文を発表した2017年から、光ニューラルネットワークの研究が非常に盛んになった」と名古屋大学大学院 情報学研究科 教授の石原亨氏は語る。

光を利用して演算する「光ニューラルネットワーク」
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光を利用して演算する「光ニューラルネットワーク」
光を利用して演算処理を実行する技術開発が進んでる。入力光を光デバイスに通し、出力光で演算結果を算出する(図:名古屋大学の取材を基に日経クロステックが作成)

 光ニューラルネットワークの概念を簡単に説明しよう。左側に光回路内を通過する光の光源があり、右側に光の観測点がある。光ニューラルネットワーク内には、光の位相や強度などを変調する光デバイスを並べる。光デバイスはコンピューターの電気信号を受けて動作する。

 コンピューターに学習用サンプルのパラメーターデータを与え続け、光ニューラルネットワークで正しい演算結果(出力光)を観測できるように、光デバイスへの電気信号強度を調整し続ける。

 この調整の中でコンピューターは、正しい演算結果が得られる光デバイスへの電気信号を学習する。

 学習後、電気信号を固定することで、学習済み光ニューラルネットワークが完成する。ここに推論用サンプルのパラメーターデータをコンピューターに与えると、光ニュートラルネットワーク中の光の伝搬だけで正しい演算結果が得られるようになる仕組みだ。

 この技術の応用先としては自動運転車が挙げられる。「自動運転車がエッジ側で膨大データを処理し続けようとすると、搭載している電池をすぐに使い切ってしまう」(インテル 日本法人 執行役員 新規事業推進本部本部長の大野誠氏)。自動運転車では、周囲の状態などを低消費電力で認識できるようにする演算処理が求められている。そこで光ニューラルネットワークで消費電力を抑えられる可能性がある。

 さらに光電融合技術の普及が進めばセンサー類から集めたデータを光で送受信するため、同デバイスの利用先が広がっていくはずだ。例えばCMOSイメージセンサーは周囲の光をセンシングし、電気信号として取り出している。それを再度変換して光信号で送信することで、光ニューラルネットワークデバイスによる物体認識などの分析処理を高速処理できるようになる。自動運転などで求められる瞬時の認識・判断に寄与するかもしれない。

産総研や名古屋大も研究開発

 光ニューラルネットワークの研究開発は、産業技術総合研究所(以下、産総研)や名古屋大学などが取り組む。産総研は同デバイスを利用し、光ニューラルネットワークで3種類のアヤメの分類に取り組む研究を進めている。

産業技術総合研究所が開発する光ニューラルネットワークデバイス
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産業技術総合研究所が開発する光ニューラルネットワークデバイス
サーバーなどに設置することでアクセラレーターとしての利用を考えている。パラメーター数に応じて、光源近くのマッハツェンダー干渉計を操作する(写真:産総研)