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 NTTがこれまでにない規模の大勝負を仕掛ける「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」構想。同構想が掲げる超高速・大容量で超低遅延なネットワークを実現するのが、「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」である。「1人1波長」のエンド・ツー・エンド(E2E)のパスを作り、用途ごとに高速・大容量伝送を扱えるようにする。遅延が避けられない現在のネットワークを改善するため、TCP/IPに代わる新たなデータ転送手法も考案する。

 「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」は、その名の通り現在、中継系ネットワークに使われている光伝送をエンド・ツー・エンドに拡張し、ユーザーや用途ごとに光のままで超高速・大容量通信を実現する技術だ。

1人1波長の光パスをエンド・ツー・エンドで提供
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1人1波長の光パスをエンド・ツー・エンドで提供
大容量の光パスの中にプロトコルに依存しない大容量データをそのまま送受信するイメージだ(図:NTTの資料を基に日経クロステックが作成)

 光伝送の強みは、1本の光ファイバーに異なる波長を多重することで大容量化できること。APNは、この波長多重をエンドユーザーのネットワークにまで広げ、「1人1波長」のような世界の実現を目指す。1ユーザー当たり100Gビット/秒(Gbps)といった超高速・大容量通信も視野に入る。たとえばフルHDの60分動画ならわずか0.1秒でアップロードできるようになる。遅延もマイクロ(µ)秒オーダーまで抑えられるという。「つなげたい場所同士を、サービス要求に応じて大容量光パスで即時に結ぶ」(ネットワーク基盤技術研究所 コグニティブファウンデーションNWP PM 主席研究員の安川正祥氏)というコンセプトだ。

 これだけの超高速・大容量通信が実現するとなると、映像などを圧縮して伝送する必要がなくなる。特定のプロトコルに依存せず、あらゆるデータを大容量の光の土管を通じて瞬時に送れるようにすることも、APNが目指す世界だ。

 そんなAPNのユースケースとして最初に想定するのが、大容量・低遅延が求められる映像伝送だ。NTTは2020年11月に開催した同社の研究開発イベント「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」で、APNのプロトタイプシステムを展示。テレビ局の映像中継などの用途を想定し、8K映像コンテンツを非圧縮で実験網内を伝送するデモを披露した。

E2Eの光パスを論理構成

 APNでは、光伝送装置や波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing)技術を生かし、ユーザーや用途ごとにオンデマンドで異なる波長の光パスを割り当て、エンド・ツー・エンドでつなぐ。現在の商用ネットワークはインターネットのパケット処理などのために電気信号に変換しているが、APNでは一気通貫で、光信号を用途ごとに運ぶ。そこで必要になるのが、用途に応じてつなげたいモノや場所を結ぶ、フルメッシュの光ネットワークである。