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APNではTCP/IPの限界が顕在化

 APNで超高速・大容量の通信を確立したとしても、現状のインターネットのプロトコルであるTCP/IPを使うままではその能力を最大限発揮できない。「TCPはパケット消失時にデータ再送によって信頼性を確保する。だがそれにより遅延を招いてしまう」(未来ねっと研究所 フロンティアコミュニケーション研究部部長 主幹研究員の高杉耕一氏)ためだ。

 さらにTCPは、送達確認せずに送れるデータ容量(ウインドウサイズ)が、1Gバイトまでと規定されている。送達確認後、ウインドウサイズを拡大できるが、IOWNが想定する100Gビット/秒の高速通信では十分に能力を発揮できない。TCP/IPはどんな環境下でもつなぐというインターネットの仕組みに基づいているため、高速道路のようなIOWNではボトルネックになってしまうのだ。

脱TCP/IPで2倍異常の高速伝送を実現へ
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脱TCP/IPで2倍異常の高速伝送を実現へ
再送などで遅延が発生するTCP/IPではなく、HPCのメモリーアクセスに用いられるRDMAの活用を検討している(図:(a)はNTTの資料を基に日経クロステックが作成、(b)はNTT)

 そこでNTTは、超高速・大容量で超低遅延に対応するためTCP/IPに代わる仕組みとして、従来HPC(High-Performance Computing)のメモリーアクセスに使われてきたRDMA(Remote Direct Memory Access)を活用できる可能性があるとする。

 RDMAを使ったファイル転送は、TCP/IPを使った場合と比べてプロトコルスタックがシンプルになるほか、TCPのような再送が発生しない点が利点だ。実際、NTTがRDMAとTCP/IPでファイル転送速度を比較したところ、RDMAのほうが2〜9倍高速という結果だったという。

RDMAの課題はセキュリティー

 もっともRDMAの採用により、再送によって信頼性を確保するTCPのメリットが失われる。NTTはこの点についてAPNでは、光パスを1つのサービスで占有することで信頼性を確保できるとしている。また、さらなる信頼性確保のために、たとえば映像伝送の場合は2本の独立した光パスに冗長化したデータを流すとする。片方の系で障害が起きても、伝送が途中で途絶えなくて済む。また、選択的に再送することもできる。

 こうしたメモリーアクセスのデータ転送技術は、第1部で述べたディスアグリゲーテッド・コンピューティングとも連携しながら開発する。CPUセントリックではなく、メモリセントリックなコンピューティング技術は、IOWN全体の重要な要素技術になる。

 一方で、RDMAの現状の課題として上がるのが、セキュリティーである。HPCの領域で用いられてきたRDMAは、元々きょう体内のモジュール間通信などセキュリティーリスクが低い場面に適している。大規模ネットワークの場合は情報漏えいが不安視される。

 「HPC用のRDMAをそのまま完全に使えると思っていない。伝送距離が長いと課題も当然増える。RDMAをチューニングするか、別の方法も視野に入れる」(高杉氏)とする。大枠が決まりつつあるAPNは、今後詳細な技術検討をするフェーズにある。