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 NTTが2030年代の商用化を目指すIOWN構想。その大きな柱の1つが、現実世界の都市や個人をサイバー空間に再現する巨大なデジタルツインだ。NTTは「4Dデジタル基盤」という名前で、デジタルツインの基盤となる超高精度な3次元地図の開発を進めている。

 高精度な地図情報を作る上での課題の一つはコストだ。高い測位機能を持つGNSSレシーバーは100万円ものコストがかかるという。NTTは、位置情報処理に強みを持つライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティングと共同で、数万円程度の製品で100万円クラスのGNSSレシーバーモジュールと同等の性能を実現できる技術を開発した。それが「クラウドGNSS測位アーキテクチャ」だ。

クラウドGNSSで位置精度向上
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クラウドGNSSで位置精度向上
測位精度を高めるために演算をクラウド上にオフロードする仕組みだ(図:NTTの資料を基に日経クロステック作成)

 一般的なGNSSレシーバーは、衛星信号の受信から測位の演算処理まであらゆる機能を1つのチップにまとめている。測位の精度は、チップの演算処理性能に依存するため、精度を高めるうえで限界があった。

 クラウドGNSS測位アーキテクチャは、測位の演算処理をクラウドにオフロード(負荷分散)することで測位精度を向上する仕組みだ。GNSSレシーバーが受けた観測データを基にクラウド上で測位演算し、結果を返送する。GNSSレシーバーの役割はあくまで受信機としての機能のため、汎用の低コスト製品でも問題はない。「消費電力も従来の半分にできる」(NTT ネットワーク基盤技術研究所 主幹研究員の吉田誠史氏)。

 非常に高価な、レーザー計測車を用いたMMS(Mobile Mapping System)のコスト削減にも取り組む。一般的なMMSはGNSSレシーバーやLiDARセンサー、移動距離を算出できるIMU(慣性計測装置)などの高価な機器を搭載する。MMS1台で1億円かかることもある従来品に対し、NTTは、「MMSのコストを、9割以上削減する」(吉田氏)という技術開発に取り組む。

 具体的には「geoNebula」と呼ぶ、低価格なLiDARセンサーとカメラで撮影した2次元画像を組み合わせる技術だ。「数百万円のLiDARセンサーとカメラで、数千万円相当のLiDARセンサーのデータをつくりだす」と同社メディアインテリジェンス研究所 環境情報分析技術グループリーダーの島村潤氏は意気込む。

 低価格のLiDARセンサーは、数千万円の製品と比較するとレーザー点群の計測密度が低い。照射するレーザーの素子数が少ないからだ。geoNebulaは、低密度なLiDAR計測結果をカメラ画像で補完する仕組みだ。

 LiDARとカメラを組み合わせて低コスト化を図る手法は、京セラなども開発している。geoNebulaは、画像や点群データの分析による物体検知まで実行する点が特徴だ。建物の壁や路面などを、物体の境界を検出しながら補完するため、ノイズの生成を抑えながら高密度化できるという。「2〜3年先には実用化し、30年には数cm以内の位置情報精度を目指したい」(島村氏)と語る。