桁端部の鉛直PC鋼棒が破断して路面に段差が生じた上関大橋(山口県上関町)で、15年前にも反対側で破断が起こっていたことが日経クロステック/日経コンストラクションの取材で分かった。橋を管理する山口県はその事実を公表せず、もう1つの「時限爆弾」を放置していた。
事故が起こった上関大橋は、室津半島と長島を結ぶ長さ220mのプレストレスト・コンクリート(PC)箱桁橋だ。1969年に完成した。中央部がヒンジの「ドゥルックバンド」と呼ぶ構造形式を採用している。
2本の橋脚を中心にそれぞれシーソーのようになっていて、橋台上の桁端部には常に上向きの力がかかる。桁の浮き上がりを抑えるために橋座と鉛直PC鋼棒でつないでいた。
そのPC鋼棒の破断によって2020年11月14日夜、室津側の桁端部が突然跳ね上がり、路面に約20cmの段差が生じた。この段差は、通りかかった自動車の衝突事故を引き起こしていた。一つ間違えば、落橋しかねない致命的な損傷だ。コンクリート内への水の浸入で腐食したとみられる。
鉛直PC鋼棒は、桁や橋台のコンクリート内部に埋め込まれているので、目視では点検できない。そのため、橋を管理する県はPC鋼棒の腐食状態などをチェックせず、17年度の定期点検で健全度を2番目に良好なIIと判定していた。
事故後に橋座の前面にある突起部をはつって調べたところ、18本の鉛直PC鋼棒のうち8本の破断を確認できた。桁全体が浮き上がっているので、他の10本も見えない箇所で破断したか、あるいは抜け出ていると考えられる。