桁端部が跳ね上がる事故を起こした上関大橋にとって、桁への上向きの力に対抗する鉛直PC鋼棒は「アキレスけん」だ。破断すれば、落橋といった重大な結果をもたらす恐れがある。しかし、橋を管理する山口県がこの弱点に対して、特別な注意を払っていたようには見受けられない。
県は2006年度から12年度にかけて、上関大橋で様々な補修・補強工事を進めてきた。橋台の移動を抑えるグラウンドアンカーや、床版上面への炭素繊維シートなどによる対策工事だ。ところが、鉛直PC鋼棒に対する補強は、長島側でしか実施していない。
上関大橋のようなドゥルックバンド橋が造られたのは、1960~70年代が中心だ。三井住友建設の春日昭夫副社長は2018年に日経コンストラクションのインタビューで、この形式の橋について「日本人の技術者も知らない人が多い。橋の設計思想が受け継がれていない」と語っている。さらに、同社が施工した27橋について、「超要注意構造物」として毎年、自主点検していると明かした。
上関大橋は、同社の前身の住友建設が施工した。自主点検の状況に関して三井住友建設に取材を申し込んだが、断られた。同社の自主点検について、県は「承知していない」と答えている。