全1560文字
PR

 2021年2月13日に発生した福島県沖を震源とする地震で、東北新幹線の郡山-白石蔵王間にあるラーメン高架橋の中層横梁が約60カ所にわたってせん断破壊したような損傷を受けていたことが分かった。JR東日本が2月26日に明らかにした。

 震度5強を観測した宮城県白石市内の高架橋では、線路直角方向にある複数の横梁にせん断破壊したとみられる斜め方向の亀裂が生じた。表面のコンクリートが剥がれ落ち、鉄筋がむき出しになった部材もある。

横梁が損傷した東北新幹線の高架橋。宮城県白石市にある(写真:井上 和真)
横梁が損傷した東北新幹線の高架橋。宮城県白石市にある(写真:井上 和真)
[画像のクリックで拡大表示]
被災した高架橋の周辺は、田畑が広がっている(写真:井上 和真)
被災した高架橋の周辺は、田畑が広がっている(写真:井上 和真)
[画像のクリックで拡大表示]

 「周辺の家屋に目立った被害はなかった。詳細な分析が必要だが、背の高い高架橋が長周期地震動で損傷した可能性がある」。2月15日から16日にかけて現地周辺を調査した群馬工業高等専門学校の井上和真助教はこう指摘する。

 気象庁によると、福島県中通りで長周期地震動階級4を観測。白石市を含む宮城県南部では同階級3を観測した。

 JR東日本は1995年の阪神大震災以降、高架橋の柱のせん断破壊を防ぐための耐震補強を進めてきた。今回被災した高架橋でも、中層の横梁から上にある柱を鋼板で巻き立てるなどの補強を施していた。

 高架橋の耐震補強は通常、横梁よりも柱の耐力を高める。柱が先に壊れると、重大な被害が生じやすいからだ。横梁は地震時に高架橋が大きく変形するのを抑える。横梁に一定以上の力が加わると、損傷してエネルギーを吸収し、柱が破壊するのを防ぐ。「今回の地震で柱が損傷を免れ、横梁が先に壊れたのは、設計で想定した通りともいえる」と井上助教は話す。

 しかし、今回の地震で白石市にある強震観測点「K-NET白石」で記録された加速度は、南北方向に最大343ガル、東西方向に同223ガル、上下方向に同188ガル。3成分の合成値でも最大351ガルと、極端に大きな加速度を観測したわけではなかった。加速度応答スペクトルの最大値も、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で観測した値と比べて6~7割程度にとどまる。

K-NET白石における南北方向の加速度応答スペクトル。減衰定数は5%とした。周期0.5秒前後や1.4秒前後の加速度応答スペクトルは、今回の地震が東北地方太平洋沖地震を上回った。防災科学技術研究所のデータを基に日経クロステックが作成
K-NET白石における南北方向の加速度応答スペクトル。減衰定数は5%とした。周期0.5秒前後や1.4秒前後の加速度応答スペクトルは、今回の地震が東北地方太平洋沖地震を上回った。防災科学技術研究所のデータを基に日経クロステックが作成
[画像のクリックで拡大表示]
K-NET白石における東西方向の加速度応答スペクトル。減衰定数は5%とした。防災科学技術研究所のデータを基に日経クロステックが作成
K-NET白石における東西方向の加速度応答スペクトル。減衰定数は5%とした。防災科学技術研究所のデータを基に日経クロステックが作成
[画像のクリックで拡大表示]

 高架橋の横梁が損傷したメカニズムについて、「分析や検討はこれから。今回の地震の特徴や被害状況については、鉄道総合技術研究所の専門家に調査を依頼しているところだ」とJR東日本広報部の細川郷平氏は言う。同社は横梁に生じた亀裂にエポキシ樹脂などを注入したり、モルタルなどで断面修復したりして補修した。

損傷した横梁の復旧工事の様子。上の写真とは別の箇所(写真:JR東日本)
損傷した横梁の復旧工事の様子。上の写真とは別の箇所(写真:JR東日本)
[画像のクリックで拡大表示]

 東北新幹線の高架橋は、東北地方太平洋沖地震をはじめ、過去の地震で被災したものも多い。その際に補修した部分が劣化するなどして、今回の地震で再び損傷した可能性も考えられる。