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 福島県相馬市などで震度6強を観測した福島県沖地震。周囲は無傷なのに、比較的新しい免震建物に損傷が生じるケースがあった。細部に注意して設計しないと、免震の評判を落としかねないと専門家は危惧する。

 エキスパンションジョイントが衝突し、外構のコンクリートが大きくひび割れる――。これは、2021年2月13日に発生したマグニチュード(M)7.3の福島県沖地震で、福島県内にある免震構造の庁舎に生じた被害だ。日本免震構造協会が21年3月29日に公開した免震建物に関する被害調査の概要に示されている。

外構が損傷した福島県内の庁舎。免震構造を採用している。写真右上が跳ね上げ式のエキスパンションジョイント。日本免震構造協会の調査によると、庁舎は西側(写真左手)に約13cm、東側に6cm移動した(写真:久田嘉章・工学院大学教授)
外構が損傷した福島県内の庁舎。免震構造を採用している。写真右上が跳ね上げ式のエキスパンションジョイント。日本免震構造協会の調査によると、庁舎は西側(写真左手)に約13cm、東側に6cm移動した(写真:久田嘉章・工学院大学教授)
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 この庁舎は、鉛プラグ入り積層ゴム支承と天然ゴム系積層ゴム支承、転がり支承、弾性滑り支承を用いた鉄骨造の免震建物。16年に完成した。建物周りのクリアランスを覆うエキスパンションジョイントには、段差を設けず簡単に設置できるため採用事例が多い「跳ね上げ式(せり上がり式)」を用いている。

 跳ね上げ式のエキスパンションジョイントは、建物が外構側(非免震部)に向かって動くと、傾斜に沿って板が跳ね上がる仕組み。この庁舎では地震時にうまく跳ね上がらず、傾斜に衝突したとみられる。

 日本免震構造協会の調査団の一員として福島県内の調査を担当した工学院大学の久田嘉章教授は、「傾斜が約45度と急で、しかも外構側の地盤が軟弱だったようだ。このため、跳ね上がらずに押し込んでしまい、外構が損傷したのでは」と指摘する。

建物が動くと傾斜に沿って跳ね上がる仕組みだったが、跳ね上がらず衝突したとみられる(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
建物が動くと傾斜に沿って跳ね上がる仕組みだったが、跳ね上がらず衝突したとみられる(資料:取材を基に日経クロステックが作成)
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 エキスパンションジョイントの損傷は、東日本大震災でクローズアップされた。同協会の調査では、震災の被災地などにある免震建物の3割に、エキスパンションジョイントの不具合が見つかっている。

 当時、先端カバーが床に引っ掛かって損傷したり、可動範囲に後施工した支柱と衝突して損傷したりと、様々な事例が報告された。同協会はこうした実態を踏まえ、13年4月に「免震エキスパンションジョイントガイドライン」をまとめた。設置場所などに応じてA~C種のランクを設けて性能指標を提示。設計や施工の注意点なども併せて示した。