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大手リース会社、三井住友ファイナンス&リースは2020年度から2022年度までの中期経営計画の中で、自社が目指す姿の1つに「デジタル先進企業」を掲げている。ファイナンスやリースに関連して新たな価値をもたらす新サービスを生み出して提供していくためだ。社内で進めているDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトは30種類に上る。今回はこのうちの1つ、「AI OCR」の普及に関するプロジェクトを取り上げる。

 AI(人工知能)を組み込んだOCR(光学的文字認識)である「AI OCR」を導入する企業は日本でも増えているが、三井住友ファイナンス&リース(SMFL)はひと味違う。AI OCRを独自開発して、2017年春から様々な業務に適用しているのだ。

 与信審査に必要な「決算書の内容を読み取って社内の審査システムに入力する」といった作業をAI OCRで自動化したほか、パソコンで利用できるAI OCRアプリを開発。他にもスマートフォン版のAI OCRアプリを使い、リース物件であるトラックのナンバープレートを読み取ることで、資産管理の効率化も目指している。

 AI OCRの開発を推進しているのは、DXを推進する組織の1つであるデジタル開発室に在籍している自社のAIエンジニア。ここ数年は、フィンランドやインド、中国など外国籍のデジタル人材の採用も進めている。

 AI OCRの適用によって大きな効果を上げたのが、事務機器や厨房設備などのリースの受付業務だ。この業務では十数種類の申込書や見積書が1日1000件以上、ファクスで寄せられる。それらを自動で仕分けるAI OCRシステムである「FAX Frontier」を開発したところ、それまで受付担当者が年3000時間以上を費やしてきた仕分け作業をなくす成果を得た。

 書類を仕分けた結果や書類の内容はシステムの画面で確認できるようにして、ペーパーレス化も実現した。営業担当者はどこにいても担当する顧客が送ったファクス文書を確認できるようになり、顧客対応もスムーズになった。

 SMFLが金融サービスの一環として手掛けている、顧客に合った生命保険の提案でもAI OCRを活用している。読み取っているのは顧客が加入中の保険設計書。保険会社や顧客によって内容が多岐にわたる保険設計書の中から、「加入年数ごとに保険料はいくらになるか」「保障内容などはどう変わるか」などを記した表をAI OCRが探し出してデータを抽出する。それまで営業担当者が30分かけていた保険設計書の分析作業の時間が、AI OCRによって1~2分程度に短縮。営業担当者は保険の提案検討などに多くの時間を割り当てられるようになった。

読み取りデータをシステムの入力項目と自動で対応付け

 2020年4月からは、リースなどを希望する顧客への与信審査の効率化を図る「決算書入力補助AIプロジェクト」を始めた。このプロジェクトではWebベースのAI OCRシステムを開発した。2020年11月から営業部門の一部でパイロット版の利用を始め、2021年3月にも全社向けに展開する予定だ。

 このシステムは営業担当者が顧客企業から入手した貸借対照表や損益計算書といった決算書の内容を、社内の審査システムに入力する作業を効率化する。決算書のデータは一度に3年分ほどを入力する必要があり、人間がやると1時間半ほどかかる。年間で作業時間は数千時間規模になるという。この作業をAI OCRで自動化することで、営業担当者がより多くの顧客企業を訪問したり、より良い提案を検討したりする時間を増やせるようにする。

 決算書の入力を補助するAI OCRシステムの特徴を、デジタル開発室AIチームのアキ・クトボネン テックリードは「紙の文書にある文字をAI OCRが読み取るだけではない。読み取ったデータを審査システムの画面にあるどの項目に入力すべきか。その対応付けまでAIが予測する」と説明する。

 AI OCRシステムが決算書を読み取った後の画面では、審査システムのどの項目に入力すべきかAIが予測した文字列が強調表示されている。

三井住友ファイナンス&リースが「決算書入力補助AIプロジェクト」で開発しているAI OCRシステムの画面例。強調されている部分は、審査システムの入力画面上の項目と対応付けが済んでいることを示している
三井住友ファイナンス&リースが「決算書入力補助AIプロジェクト」で開発しているAI OCRシステムの画面例。強調されている部分は、審査システムの入力画面上の項目と対応付けが済んでいることを示している
(出所:三井住友ファイナンス&リース)
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 「営業担当者は強調表示されていない部分を重点的に確認するだけでよい。その後は営業担当者によるマウス操作だけで、決算書のデータが審査システムに反映される」とデジタル開発室AIチームの京谷和樹リードは説明する。