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大手リース会社、三井住友ファイナンス&リースは2020年度から2022年度までの中期経営計画の中で、自社が目指す姿の1つに「デジタル先進企業」を掲げている。ファイナンスやリースに関連して新たな価値をもたらす新サービスを生み出して提供するためだ。社内で進めるDXプロジェクトは多岐にわたる。その1つに資産管理SaaS「assetforce」がある。そこで今回から2回にわたって、assetforceの機能面と、提供の背景や開発プロジェクトがどう進んだのかについて取り上げる。デジタル技術をふんだんに使って開発した新サービスの特徴を見ていく。

 三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、顧客企業に向けてビジネスで使う資産の調達を支援するリース事業などを手掛ける金融機関だ。しかしここ最近、グループで資産管理向けのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を開発し、提供を始めている。SaaSを提供するのは一般にITベンダー。金融機関のSMFLがこうしたデジタルサービスを提供するのは珍しい動きだと言える。

 「ベンチャー企業が提供するデジタル技術を組み込んだSaaSは導入しやすいものの、ワークフローだけなど提供機能が限られがちだ。ならばモノのライフサイクルを効率良く管理できる便利な機能を全て具備するような資産管理サービスがあればよいのではないか。そう考えてSaaSを独自に開発して提供した」。SMFLの藤原雄デジタル開発室室長兼システム企画部部付部長はこう説明する。

 藤原室長が説明しているのは、SMFLが2021年5月、戦略子会社であるSMFLみらいパートナーズと連携して本格提供を始めた資産管理SaaS「assetforce(アセットフォース)」の狙いについてだ。企業が大量に保有する様々な資産を対象に、きめ細かくリアルタイムに管理できるようにするサービスで、IoT(インターネット・オブ・シングズ)ソリューションとも言える。

三井住友ファイナンス&リースグループが提供する資産管理SaaS「assetforce(アセットフォース)」の画面例
三井住友ファイナンス&リースグループが提供する資産管理SaaS「assetforce(アセットフォース)」の画面例
(出所:三井住友ファイナンス&リース)
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 SMFLはこれまでも固定資産管理システム「総合資産管理サービス A.S.P. Neo 3.0」を提供してきた。同じ資産管理分野のサービスではあるものの、会計や税務の処理効率化に重点を置いたものだ。「assetforceは資産それぞれの稼働状況や状態把握に重点を置いているので、既存サービスと使い分けられる。両方の導入を検討する顧客企業も出始めている」と、SMFLの福間義行企画部クオリティ室マスターブラックベルトは説明する。

多くの資産を管理する企業には様々なシステムが必要に

 assetforceのターゲットは、社内で多くの種類の資産を管理している企業だ。こうした企業の一例がSMFLから大量の商品をリースで調達し、他の顧客企業に向けて貸し出すといったレンタル業だ。

 レンタル業の現場では、「レンタル商品を資産として倉庫で管理。顧客のニーズに応じて、レンタル商品を倉庫でピックアップした後に出庫。顧客がレンタル商品を使い終わったら、引き取って入庫。点検したりメンテナンスしたりした後、出庫できるよう倉庫で管理する」といったように、ライフサイクル全体で資産を管理していく必要がある。

 さらにレンタル業の管理者や経営者は「レンタル商品はどの程度出払っているのか」「修理や買い替えが必要な商品はどれくらいあるのか」などの情報をチェックして、事業に支障を来すことがないよう、商品の保守や調達に関する計画を立案していくことも欠かせない。

 このような資産管理に関する一連の業務を効率化するには、複数のシステムを導入していく必要がある。 現在点検中なのでレンタルできないといった資産の状況を管理する「資産管理システム」、顧客から要望があったレンタル商品の一覧をまとめたり、まとまった商品の一覧を別の担当者が確認して承認したりする「ワークフローシステム」、社内で承認が下りた案件について、レンタル商品を倉庫の中からピックアップして出荷するといった作業を管理する「倉庫管理システム」、商品全体のレンタル状況などをみるといったことに活用する「分析システム」などだ。

 SMFLの川名洋平企画部クオリティ室室長兼企画部部付部長兼イノベーションPTリーダーによると、こうした一連のシステムは大手企業では整備が進んでいるという。しかし、「全ての企業でこうしたシステムが整っているとは限らない。大量の資産を管理する必要があったり、新規事業を立ち上げようとしていたりする大手企業や、中堅中小企業をassetforceのターゲットにしている」と川名室長は説明する。

資産管理に必要なシステム機能一切合切を提供

 assetforceの特徴は、日々の資産管理に必要な関連機能を含めて一切合切、提供している点だ。

 具体的には、「資産管理」に加えて「ワークフロー」「分析・レポート」「帳票」「モバイル」といった機能を盛り込んでいる。川名室長は「資産管理やワークフローなど単体の機能を提供するクラウドサービスは多い。しかし資産管理を効率化するためには、これらのツールを連携させていく必要があり、実現するにはとても大変だ。そこでassetforceではこれらの機能を全て盛り込んだ上で連携させている」と説明する。

 assetforceでは一連の機能を連携させているため、資産の貸し出し承認の処理がワークフロー上で済むと、資産管理データベースの更新や、倉庫作業の指示、指示明細の帳票出力などが自動でできるようになっている。資産の在庫量もすぐにBI(ビジネスインテリジェンス)のダッシュボードで確認できる。