自社の目指す姿の1つに「デジタル先進企業」を掲げている三井住友ファイナンス&リース。取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)は自社内にとどまらず、自社の外へと広がる。自社外、つまり取引先となり得る企業のDX支援は、デジタル先進企業としての同社の事業基盤を盤石にすることにもつながる。そんな思いから自らDXのためのツールを開発し、外販に乗り出した。その1つが2022年に入り、POSレジや商品の在庫管理などの機能を加えた新サービス「assetforce for stera」だ。今回はこのPOSレジ機能を含めた新サービス提供の狙い、提供に至った経緯に迫る。
三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、三井住友フィナンシャルグループや三井住友カード(SMCC)といったグループ会社と連携して、SMCCが提供する決済プラットフォーム「stera」向けの新サービス「assetforce for stera(アセットフォース・フォー・ステラ)」を提供している。このサービスでは、POS(販売時点情報管理)レジ機能を提供。steraの顧客企業が決済で利用している端末「stera terminal」に、POSレジの機能を追加できる。
タブレット端末やスマートフォンを使ったPOSレジアプリのサービスが普及している中、なぜSMFLはあえて、三井住友フィナンシャルグループやSMCCと連携してPOSレジサービスの提供に乗り出しているのか。
レジ業務だけだとDXは片手間、モノのハンドリング機能も提供
現在、普及が進んでいるPOSレジアプリサービスには、飲食業や理美容業といったサービスを提供する中小企業を主な対象にしているものが多い。しかし、中小企業には物販を手掛ける小売業も多く、POSレジアプリの潜在ニーズは高い。そこで、「POSレジ機能だけでなく、商品の入出庫、棚卸しなど、小売業のための機能を埋め込んだアプリが必要ではないかと考え、assetforce for steraを提供している」とSMFLの川名洋平DX推進部部長は説明する。
物販を手掛ける中小企業のDXを、このサービスを通して支援する狙いもある。川名部長はPOSレジ機能を提供するだけでは不十分と考えている。「小売業にとってレジでの作業は業務の一部にすぎない。業務全体を対象にDXに取り組まなければ、片手間で終わってしまう」と指摘する。
そこでassetforce for steraにPOSレジ機能だけでなく、商品の入出庫や在庫管理などの機能を加え、小売業を営む中小企業の社内業務を広くカバーできるようにしたわけだ。
assetforce for steraにはさらにPOSレジ機能から得られる売り上げデータや、在庫管理に関するデータを対象とする分析機能も加えている。川名部長は「在庫管理の単位であるSKUや商品単位で売り上げを管理したり、在庫管理のデータも組み合わせて財務指標を導き出したりするのは、(大がかりなシステムを導入できる)超大手はできても、一般にはできない」という。
川名部長はさらに、「各商品の売れ行きを踏まえてどの商品をどれくらい仕入れればよいのかなど、物販を手掛ける中小企業における経営者目線の課題を解決できるように、必要な機能を盛り込んでassetforce for steraを提供している」と話す。
同社の藤原雄デジタルラボ所長も、在庫の可視化やデータ分析について、「多額のシステム投資が必要なことから、これまでは大手企業でないとできなかった」という。しかし、「クラウドサービスとして提供することで、中小企業でも安価に利用できる」。