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 東京電力福島第1原子力発電所(1F、イチエフ)の1・2号機共用排気筒(高さ120m)。あの日、1号機のベントで大量の放射線物質を含む水蒸気を排出した原発事故の象徴的存在だ。2019年から20年にかけてこの排気筒の撤去工事を担ったのが、従業員約200人の小さな地元企業のエイブル(福島県大熊町)だ。

 排気筒撤去工事を手掛ける下地になったのが、16年に手掛けたドレンサンプピットの修復工事である。場所があまりにも狭く、かつ周辺の放射線量が極めて高いため、大手企業でさえ「3年かかる」と身構えた難しい工事だった。福島第1原発の廃炉措置を長く取材するノンフィクション作家 山根一眞氏がリポートする。

クローラー型ロボットとクレーン型ロボットの模式図
クローラー型ロボットとクレーン型ロボットの模式図
(出所:東京電力ホールディングス)
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 1・2号機排気筒下の小さな貯水設備、ドレンサンプピット。その内部にロボットアームを差し入れ、新たにポンプと2つの水位計、排水用のホースを設置し、高線量の水を排出する工事を請け負ったエイブル。場所があまりにも狭く、かつ周辺の放射線量が極めて高い。小さな現場の大きな難工事だった。

クレーンを改造してロボットに

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クローラー型ロボットによるモックアップでの模擬試験
クローラー型ロボットによるモックアップでの模擬試験
(写真:山根 一眞)
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 エイブルはどうやって工事するのか。取締役工事事業本部・第一工事部長の岡井勇さんはこう説明した。「ピットを覆うステンレス鋼製ボックスの切断は作業用のクローラー型6軸ロボットを遠隔操作で実施します。一方、現場からやや離れた場所にクレーン型ロボットを別途配置し、最大34.0mのブームを伸ばして現場にアクセス。水位計などを把持、遠隔操作で設置します。つまり一連の作業を2台のロボットの連携で担う工法を考案しました。貯留水を排出するためのホースの設置やピットの蓋を切断してできた開口部に蓋をする作業もクレーン型ロボットが行います」

 敷地内で工事の訓練を行うクレーン型ロボットのアームには松村重機建設という名が記してあった。

クレーン形ロボットのアーム先端部分
クレーン形ロボットのアーム先端部分
松村重機建設の文字が見える。(写真:山根 一眞)
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