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 新型コロナ禍でリモートワークが広がるなか、「副業」するIT人材が増えている。背景にあるのが地方企業などのデジタルトランスフォーメーション(DX)支援やEC(電子商取引)サイト構築の需要の高まりだ。

 取材を進めると、副業年収の相場は100万~200万円に達し、副業の真の狙いは「キャリア開発」にありそうだということが見えてきた。キャリアを会社任せにせず、副業を通して自律的に「開発」した1人のIT人材から紹介しよう。

「過激」だった副業先へのアプローチ

 「会社に依存せず、どこでも通用するようなスキルを身に付けたかった」。神奈川県に住む田辺悠介さん(29)は副業のきっかけをこう振り返る。現在2社のスタートアップで働く。そのうちの1社、東南アジアの保育・教育施設向けICTシステムやヘルスケア管理サービスを手掛けるWELY(京都市)はもともと副業先だった。

田辺悠介さん、現在は2社のスタートアップで働くほか、メンター(助言者)仲介サービスのMENTAを通じてプログラミングなどを教える
田辺悠介さん、現在は2社のスタートアップで働くほか、メンター(助言者)仲介サービスのMENTAを通じてプログラミングなどを教える
(撮影:稲垣純也)
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 同社から「CTO(最高技術責任者)になってほしい」と請われ、2020年1月に転身。田辺さんはもともと起業も考えていたが、副業を通じて様々なスタートアップの社長と一緒に働くうちに「トップよりも参謀のほうが自分に向いている」と気づいたという。

 田辺さんはかつて、副業で月に100万円以上稼いでいた「猛者」だった。大学院で物理学を専攻し博士前期(修士)課程修了後、2016年4月にコニカミノルタに新卒入社した。

 医療ソフトウエアのエンジニアとして働くなか、同社は2017年12月に副業を解禁。田辺さんは入社2年目の2018年1月に副業を始めた。

 大学時代から研究で使っていたためプログラミングのスキルは高かった。「自分のスキルの中で最も汎用性が高いのはプログラミング」と考え、ソフトウエア開発などの案件を副業で請け負った。

 副業先へのアプローチは「過激なやり方だった」(田辺さん)。SNS(交流サイト)で企業のCTOや仕事の案件を持っていそうなフリーランスの人を見つけては「一緒に仕事させてもらえないか」とダイレクトメッセージを送ったのだ。

 そうして副業を幾つかこなすうちに、気がついた。「単にプログラミングを請け負うだけではなく、あるソフトウエアをつくるときにどんな言語やどんな技術を使ってどう組むかといった、技術的に踏み込んだアドバイスまでできると時間単価がぐっと上がる」。多いときは3社から副業を同時に引き受け、「月に100万円以上の副収入を稼いだ」(同)。

 コニカミノルタを退職したのは副業を始めて2年弱たった2019年11月のこと。田辺さんは同社の仕事にやりがいを感じ、何より好きだったので、辞めるつもりはなかった。

 だが「システムを構築するだけではなく、より上流から携わりたいという気持ちが強まった」(同)。副業を通して見つけた「やりたいこと」が、WELYのCTOへの挑戦を後押ししたわけだ。

 2020年6月からは不動産業界向けVR(仮想現実)開発のラストマイルワークス(東京・中央)でもテックリードとしてWebエンジニアチーム全体を束ねている。さらにクラウドソーシング大手ランサーズ子会社のMENTA(東京・渋谷)が提供する、メンター(助言者)をオンラインで仲介するサービス「MENTA」を通じてプログラミングなどを有償で教えている。

 田辺さんは2つ以上の仕事を掛け持ちするいわゆる「パラレルワーカー」になった。月収はかつての数倍になったようだ。