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副業で技術を磨き、本業で「トップエンジニア」認定

 「副業は自分の技術力を会社にアピールすることにつながる」。実体験をこう語るのはソフトバンクでアプリケーション技術本部担当課長を務める鶴長鎮一さん(50)だ。鶴長さんは、同社が専門分野において突出した知識やスキルを持つと認定したトップエンジニア「テクニカルマイスター」23人中の1人である。

ソフトバンクでアプリケーション技術本部担当課長を務める鶴長鎮一さん。副業の書籍執筆の実績が認められ、兼務や社内認定獲得などにつながった
ソフトバンクでアプリケーション技術本部担当課長を務める鶴長鎮一さん。副業の書籍執筆の実績が認められ、兼務や社内認定獲得などにつながった
(撮影:木村 輝)
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 同社が副業を許可したのは2017年11月のこと。社内規定にあった副業の「原則禁止」という文言を削除し、許可制とした。副業の承認数は2021年1月までで累計1400件。現在約350人の社員が副業をしている。

 副業の中で最も多い仕事は大学などの講師という。次いで中小企業のEC(電子商取引)やWebマーケティングなどのコンサルティング、WebサイトのデザインやコーディングといったIT関連が続く。

 副業を解禁した目的について、人事本部労務厚生企画課の石田恵一課長は「多様な経験をすることでスキルを高め、ネットワークを広げ、自己成長につなげてもらうこと」と話す。副業をした社員にアンケートをとったところ、約9割が成長につながっているとし、約6割が副業で培った経験やスキルを業務に生かせているとした。

 副業許可の狙いがうまく当たるなか、「副業をしていることやその内容が社内で有名になった結果、社内のプロジェクトメンバーとして声がかかったという例もある」(石田課長)。その1人が鶴長さんだ。

 鶴長さんの本務はGPU(画像処理半導体)サーバーからアプリケーションまで含めたHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)環境の構築である。グループ内での兼務も3つと多い。例えば3~4年前からソフトバンクグループ傘下でAI(人工知能)事業への投資を手掛けるディープコア(東京・文京)で、起業家に対して技術情報を提供している。

 本業の傍ら、副業原則禁止の時代から会社の許可をもらって、サーバーやアプリ開発をテーマにした書籍の執筆や雑誌への寄稿を約20年間続けてきた。単著と共著をそれぞれ年1冊ずつのペースで出版しているという。

 この副業を知った社員が「手伝ってほしい」と言ってきたことで3つの兼務につながった。「副業が本業の仕事を広げた」(鶴長さん)。

 さらに副業がテクニカルマイスター認定にもつながった。テクニカルマイスターはその能力をさらに伸ばすために本業と並行して自身の専門分野を自由に研究・開発できる。

 「テクニカルマイスターの認定が取れたのも副業で技術力を研さんし、社内に目に見える形でアピールできたおかげだ」と鶴長さんは振り返る。副業で得た経験を会社が正当に評価してトップエンジニアまで上り詰めた鶴長さん。その実績は後に続く技術者にとって目指すロールモデルとなっている。