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 企業が副業解禁に動くなか、新型コロナウイルスの感染拡大によりリモートワークへの移行が進んでいる。この2つの流れにより、多くのIT人材が、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む行政機関や地方企業で副業を始めている。副業IT人材の活用は日本全体のDXを進めるカギともなりそうだ。

東京で神戸市の副業に関わる

 「副業という形で神戸に関わってもらい、神戸のファンを増やし、いずれは神戸に移住する人を増やしたい」。神戸市役所の東京事務所で所長を務める中山裕介氏はこう話す。

神戸市の東京事務所で副業をする水関裕人さん(前列左)と植草俊輔さん(同右)
神戸市の東京事務所で副業をする水関裕人さん(前列左)と植草俊輔さん(同右)
(出所:JOINS)
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 2021年1月18日、同所は2人の副業人材を採用した。データ分析の専門家である水関裕人さん(33)と新規事業開発の経験が豊富な植草俊輔さん(33)だ。2人は同じ大手人材系サービス企業に勤務し、本業でもチームを組んだことがある。中山所長は採用の理由を「個別に面接をしてそれぞれ能力が高く、なおかつチームワークも発揮できると判断して採用した」と話す。

 2人の仕事内容は神戸市への移住を促進するためのデータ分析とコミュニケーションプランの作成だ。期間は2021年3月末までと短期で、報酬は1人当たり月10万円ほど。週に1度、オンラインで定例会議に出席するほか、2人は毎日1~2時間ほど打ち合わせや作業を重ねる。

 水関さんは愛媛県出身で、大阪にある大学や大学院で学んだ。「いずれ関西に戻って働きたい」という気持ちをかねて持っており、「副業を通じて神戸に人脈ができる点も応募理由の1つ」と話す。植草さんも「1つの場所にとらわれずに仕事したい」という希望を持っていたという。

 神戸市役所は東京事務所のみならず、神戸市にある本庁でも2020年9月に副業人材を募集した。1278人の応募があり、そこから35人を選んだ。市の情報発信のための動画作成やWebサイト点検などの内容で、テレワークで完結することもあり兵庫県外に住む人からの応募が704人と55%を占めた。

 神戸市はこれまでも外部専門人材の採用に力を入れてきた。2020年12月には業務のデジタル化とICT 導入による業務改革のプロジェクトを統括する「デジタル化専門官」を2人採用し、現在67人の民間人材が勤務している。

 「もともと民間企業で働く人の経験やスキルを公共に生かしたいという狙いで民間人材を採用してきたが、東京事務所としても副業人材を採用することでその動きをさらに加速させたい」。中山所長はこう意気込む。

東京都、17歳の高校生を「デジタルシフト推進専門員」に

 東京都も都庁のデジタルガバメントの取り組みを推進するために、Webエンジニアやデータベース設計の専門家などを、週2日の勤務を上限とする「デジタルシフト推進専門員」として募集した。2021年1月から4人が週1~2日働いている。

 最年少は17歳の高校生だ。ほかに大学生1人と、副業で働く20代が2人いる。民間から採用した常勤の「デジタルシフト推進担当課長」などと一緒に、Webサイトの改修やオープンデータ(誰でも自由に2次利用が可能なデータ)化などに取り組んでいる。

 「東京都のデジタル変革を進めるためには人材の確保が大きな課題だった」。東京都の渡部将亮戦略政策情報推進本部総務課長は外部人材採用のきっかけをこう話す。

 「これまでも常勤職員としては民間出身人材を採用してきたが、行政に関心がある人がいれば非常勤の副業人材でも働けるようにしようと考えた。これからも様々な形での採用を模索したい」(渡部課長)。

 大都市だけではない。地方の自治体もDX推進に向けて副業人材に注目する。副業マッチングサービスを手がけるアナザーワークス(東京・渋谷)は奈良県三宅町や埼玉県横瀬町、山梨県大月市で「DXアドバイザー」やプロジェクトマネジャー(PM)などを副業人材として採用する実証実験に取り組んでいる。

 その1つ、奈良県三宅町は面積4.07平方キロメートルと日本で2番目に面積の小さな町だが、100人の応募があり、そこから7人を採用した。「自治体の課題に応じて人材をプロデュースしたい」とアナザーワークスの大林尚朝CEO(最高経営責任者)は話す。