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 企業が副業解禁に踏み出し、副業をする従業員が増えている。これに比例して、副業に関する不安や悩みも増えている。

 この背景には、副業に関するルールがまだ整備され切れていない点がある。例えば「労務管理をどうするのか」「本業と副業の『利益相反』とは何か」などである。

 日本の「副業元年」は2018年とされている。同年、厚生労働省がモデル就業規則から「副業・兼業の禁止」の項目を削除したからだ。

 その後、政府は2020年7月に閣議決定した「成長戦略実行計画」で、副業・兼業をする人の労働時間管理について、労働者本人の自己申告制度を設けることなどを盛り込んだ。これにより、本人の申告漏れや虚偽申告があった場合、副業先や兼業先の仕事で労働時間の上限を超えて働いても、本業の企業は責任を問われないこととなった。

 これに合わせて同年9月には厚労省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定した。それでもまだ細かい点ではルールが整備され切ったとは言えず、企業と従業員が手探りを続けている状態だ。

 こうした状況に対し、キャリア開発に詳しい法政大学の田中研之輔教授は、人事とITを組み合わせた「HRテック」が有用だと指摘する。「副業をする人が増え、メンバーシップ型とジョブ型を組み合わせたハイブリッド型雇用に移行する企業が増えることで、HRテックの重要性が増す。個人のスキルやアウトプットをデータで可視化し、適材適所を実現し、より合理的な形でのキャリア形成を促す必要がある」。

法政大学の田中研之輔教授
法政大学の田中研之輔教授
(出所:田中研之輔氏)
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 副業が文化として定着するには、副業にまつわる人材や企業の様々な不安を解消する民間のHRテックサービスが不可欠というわけだ。最新動向を見ていこう。

過半が「隠れ副業」

 副業をしている従業員のうち、本業の勤務先に副業を申請していない割合は54%――。パーソルプロセス&テクノロジーが2020年12月に実施した調査では「隠れ副業」の実態が明らかになった。

 「本業の勤務先の人事担当者が気づいていないケースが多いのでは」。同社の成瀬岳人ワークスイッチ事業部事業開発統括部部長はこう分析する。

 同社によれば、本業先で正社員として勤めながら副業をする人は、副業先とも雇用関係を結ぶ「2重雇用」ではなく、個人事業主として副業先から業務委託で仕事を受けるケースが多い。年間で複数の案件を受ける人が多いため、全ての副業案件を申請するには手間がかかることが隠れ副業の背景にありそうだ。

 ただでさえ副業を認めることは本業の勤務先としてはリスクをはらむ。具体的には、「副業を認めることで、過重労働や情報漏洩、引き抜きといったリスクが生じる」(成瀬部長)。

 まず過重労働に関してだ。厚労省の改定版ガイドラインでも、従業員が他社から業務委託を請け負っている場合、労働基準法の適用から除外され、本業先と業務委託先の労働時間は通算されない。ただし「極端なことを言えば、厳密な労働時間を把握できなくても、本業先は自社の業務に影響がないように『無理していないか』さえ分かればいい」と成瀬部長は指摘する。

 情報漏洩はどうか。「副業に限ったリスクではないが、副業者のリテラシー教育が要る」(成瀬部長)。