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 「府省庁とはほとんどオンラインでやり取りするようになった」――。立憲民主党の中谷一馬衆院議員は、長年続いた国会議員と行政機関とのやり取りが新型コロナウイルス禍で激変した事実をこう証言する。

 感染対策を進めるのは霞が関とて例外ではない。対面での会議や打ち合わせを避け、オンラインへの置き換えが浸透しつつある。ツールやインフラの充実や、対面とオンラインとの使い分けなど、整備すべき課題も見えてきた。

「もんとり」は原則オンラインへ

 対面からオンラインへの変化が明に宣言されたのは2021年1月21日のことだ。与野党は衆院議院運営委員会理事会で、官僚による国会議員への「質問取り」について対面形式をできる限り自粛し、オンラインや電話での対応に切り替えることを合意した。

 質問取り、通称「もんとり」とは、国会議員が事前に省庁側に伝えた委員会などでの質問について、官僚がその回答をつくるために議員会館に出向いて議員本人から質問の詳細などを聞き取る行為を指す。複数の官僚が議員会館に集まって「密」になりやすいだけでなく、かねて官僚の労働負荷が高まる原因と指摘されてきた。

 合意翌日の1月22日、自民党青年局はオンラインで開催した定例会議で、「コロナ禍での永田町・霞が関の働き方改革」として、質問取りや官僚からのレクチャー、党内の会議などは「オンラインを原則とする」という活動方針を打ち出した。省庁でのリモートワークなどが進まない原因の1つには、官僚の国会対応の負担が大きいことがあると考え、まずはその負荷を減らそうという狙いがある。

 「テーマを深堀りして議論したりブレスト(ブレインストーミング)したりするときは対面のほうがいいかもしれないが、もんとりやよく知っている議員との打ち合わせであればオンラインでいいと思う」。

 コロナ禍のさなか、2020年9月から自民党青年局長を務める牧島かれん衆院議員はこう考えを述べる。「(コロナ禍が落ち着いてからも)対面とオンラインを使い分けて、ハイブリッドになっていくのではないか」(牧島議員)。

牧島かれん衆院議員
牧島かれん衆院議員
(撮影:的野 弘路)
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 牧島議員自身は1回目の緊急事態宣言下の2020年春から頻繁にオンライン会議をするようになったという。コロナ禍で全国の青年局に足を運ぶことが難しくなり、コロナ禍前から党で契約していたブイキューブ製Web会議システム「V-CUBE」を使った。今では毎週金曜日の青年局定例会をはじめとして、質問取りや官僚からのレクチャー、国民や企業との面会など、1日3~4回はオンライン会議をしているという。

霞が関で進むオンライン会議システム導入

 国会議員にオンライン会議が広がっている背景には、コロナ禍で霞が関でオンライン会議ツールの導入が進んでいることがある。2020年春以降、政府は省庁の計700課に米Cisco Systems(シスコシステムズ)の「Webex」を導入した。米Microsoft(マイクロソフト)の「Teams」を4万人分使うようになった省庁もある 。

 省庁によって使うツールが異なったり、使えるアカウント数に制限があったりするものの、オンライン会議ツールの導入は急ピッチで進んでいる。立憲民主党の中谷一馬衆院議員らが各省庁におけるオンライン会議ツールの利用状況を調べたところ、2020年8月時点に比べて2021年2月時点で変化があった。

 例えばコロナ禍で有力ツールに躍り出た米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)の「Zoom」を各省庁が一気に対応した。TeamsやV-CUBE、米Google(グーグル)の「Google Meet」も使えない省庁がほぼなくなっている。

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各省庁におけるオンライン会議ツールの利用状況。上が2020年8月時点で、下が2021年2月時点。
各省庁におけるオンライン会議ツールの利用状況。上が2020年8月時点で、下が2021年2月時点。
(出所:中谷一馬衆院議員)
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 立憲民主党は2020年4月から代議士会や両院総会、党大会など、人が集まる会合はほとんどオンライン開催に切り替えた。国民からの陳情や要望もZoomや電話で対応し、党内会議や地方組織との会合もオンラインが多いという。