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 新型コロナ禍のなか、国会議員が府省庁とオンラインでやり取りする場面が増えている。ところが肝心の国会は今もオンライン開催に至っていない。実現を阻む壁があるからだ。その壁を壊せるのは世論である。

オンライン時代に合った法解釈が必要に

 英国の議会下院は2020年4月、米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)が提供するWeb会議サービス「Zoom」を審議の一部に導入した。「700年の歴史を持ち権威ある英国議会ですらZoomで予算委員会をやっている」と立憲民主党の中谷一馬衆院議員は話す。

オンラインで取材に応じた立憲民主党の中谷一馬衆議院議員
オンラインで取材に応じた立憲民主党の中谷一馬衆議院議員
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 日本はどうか。現在も国会にタブレットの持ち込みが許されていないのが実態だ。振り返れば2019年4月に衆院内閣委員会でデジタル手続法を審議した際、平井卓也IT担当相(当時、現デジタル改革相)らが国会審議で初めてタブレットを使ったと話題になった。

 しかし、自由民主党青年局長の牧島かれん衆院議員によれば、「当時は委員長や質疑者、答弁者もタブレットを利用したのは与党の時間だけ」だった。野党の質問時間は紙で答弁したというのだ。与野党協議で合意できていなかったのが理由という。

 現在も国会でタブレットが利用できない背景には、野党から質疑の最中にタブレットの通信機能を使うと大臣答弁の際に秘書官が答弁で使うペーパーを差し入れる行為が「見えなくなる」との指摘があったためだ。

 ただこれはタブレットに「ペーパーの差し入れを見える化する機能」を盛り込むなどで解決できる。ITで国会審議を透明化する仕組みは技術的には可能なのだ。

 では何がオンライン国会の開催を阻んでいるのか。中谷議員によると、必要になるのは憲法や国会法などの法解釈の明確化や、衆参両院の議会運営を定めた規則の改正だ。

 日本国憲法第56条は「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」とする。オンライン時代、何をもって「出席」とするのかを明確にする必要があるというわけだ。

 加えて、参議院は規則第135条で「表決の際に、現に議場にいない議員は、表決に加わることができない」と規定している。衆議院にも同様の規則がある。こうした規則などがあることによって、いまだに国会議員は本会議や委員会にデジタル機器を持ち込めなかったり、遠隔で出席して議事や表決に参加できなかったりするのだ。

突破口は「牛歩戦術が消えた理由」にあり

 オンラインで国会が開かれれば、出産や育児、介護、病気やけが、感染症対策など様々な理由で物理的に国会まで足を運べない国会議員が参政権を行使しやすくなる。与野党の若手議員はほぼ一致して審議のオンライン化などITの活用を求めており、「与野党とも若手議員が先輩議員に(オンライン国会を)提案している」(中谷議員)。

 だが中谷議員は「必ずしも(実現に向けて)動いている環境ではない」と続ける。