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 自治体の議会が政府に対し、法改正を求めて相次ぎ決議している意見書がある。内容は、議員がリモートで本会議に出席する「オンライン本会議」を開けるよう、地方自治法の改正を求めるというものだ。

 自治体とリモートという結びつきでは、投票所に行かずともスマートフォンで投票できるようにする「インターネット投票」の実現を目指す動きも出ている。いずれも早期実現を求める声が強まっている。

委員会のみオンライン開催

 新型コロナ禍において、自治体でもテレワークが進んでいる。窓口業務や個人情報を扱う業務などを除くと、自治体職員がリモートで働く場面が増えてきた半面、法制度が障壁になってテレワークに移行できないのが、地方議会の最終的な意思決定の機関である本会議である。

 磐梯山で知られる人口約3400人の福島県磐梯町は2020年5月、全国に先駆けてオンライン本会議をできるよう、国に地方自治法の改正を求める提言をまとめた。議会運営について議員が協議する全員協議会が提言を承認して、意見書を公表した。

 茨城県取手市議会なども2020年6月にオンライン本会議開催に向けて地方自治法の改正を求める意見書を決議して国に提出した。早稲田大学マニフェスト研究所が意見書のひな型を公開しており、2020年7月以降も同様の意見書を決議する自治体が相次いでいる。

茨城県取手市議会は2020年7月、高市早苗総務大臣(当時)に意見書を提出
茨城県取手市議会は2020年7月、高市早苗総務大臣(当時)に意見書を提出
(出所:取手市議会ホームページ)
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 実は、本会議ではなく、地方議会の「委員会」については既にオンライン開催できるようになっている。磐梯町が提言をまとめた1カ月前、2020年4月に総務省が通知を出した。

 通知により自治体が条例を定めればオンライン委員会を開催できるようになったため、大阪府議会などが相次ぎ条例を改正。実際に大阪府議会では2020年12月、新型コロナウイルス感染者の濃厚接触者と認定された府議会議員が自宅から委員会にリモートで参加している。

 ただ総務省は同じ通知で、何をもって地方議員が本会議に「出席」したとされるかについて、地方自治法が「現に議場にいること」と定めているとした。

町議会のデジタル化進める磐梯町

 前述の磐梯町議会は、国が地方自治法を改正してオンライン本会議を開けるようになるまで可能な範囲でデジタル化を進める方針だ。

 遡ると同町は「2019年10月からオンライン会議システムの勉強会を開いてきた」(町議会副議長とデジタル変革検討委員長を務める小林修治氏)。東日本大震災の被災を踏まえ、災害時に議場が使えない場合でも議会が機能するように備えるためだった。

 翌2019年11月には磐梯町は自治体で初となるCDO(最高デジタル責任者)を設置した。町が委嘱就任したのは行政のデジタル化などを支援する一般社団法人Publitech(東京・渋谷)の菅原直敏代表理事だ。

 2020年4月にはデジタル変革検討委員会を設置。米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)のWeb会議サービス「Zoom」を使って、小林委員長らが菅原CDOや弁護士などと、地方自治法に照らして様々なオンライン会議を開く場合の課題などを議論した。

 「地方議会は弁護士を呼ぶにも(交通費などの)費用がかかるのでオンラインで質問できる仕組みはありがたかった」。同委員会のメンバーである玉水まどか議員はこう振り返る。