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 日産自動車の「カーボンニュートラル」を目指した電動化戦略における独自性が際立つ。電気自動車(EV)とハイブリッド車(HEV)の2本柱で、トヨタ自動車やホンダが重視するプラグインハイブリッド車(PHEV)や燃料電池車(FCV)は“脇役”だ。日産でパワートレーン開発を主導する平井俊弘氏(専務執行役員)に真意と今後の見通しを聞いた。

パワートレーン開発を担当する平井俊弘氏
パワートレーン開発を担当する平井俊弘氏
日産自動車の専務執行役員でアライアンスSVP、パワートレイン&EV技術開発本部を担当。(撮影:宮原一郎)
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 48V簡易HEVには見向きもしないし、PHEVにも見向きもしない。レンジエクステンダー(航続距離延長)用のエンジンが付いたEVも行き場はないだろう。当社が考える究極はEVだ。そして、EV化を進める上で必要になる技術として、e-POWERを据えた。

 カーボンニュートラルを目指していく中で、(エンジンを発電専用に使う)e-POWERは大きな役割を担う。発電専用エンジンの熱効率の追求をすればするだけCO2排出量の削減効果が確実に出る。その改善スピードは、EVの充電インフラや再生可能エネルギーによる発電環境の整備よりも早い。

 エンジンを発電専用として使うと、効率のよい回転・トルク域だけでエンジンを動かす「定点運転」ができる。最終的には(回転数とトルクの動作点を固定した)1点での運転が可能になる。エンジンを駆動用に使うシステムでは幅広い回転・トルク域で効率を上げていかないといけない。ここにe-POWERの利点がある。

 現在開発を進めているe-POWER向け発電専用エンジンが目指しているのは、熱効率で50%を達成することだ。今回、その実現に向けて「STARC(Strong Tumble and Appropriately stretched Robust ignition Channel)」という新しい燃焼技術を開発した。

液系のリチウムイオン電池は限界に

 50年のカーボンニュートラル実現、そしてその通過点として30年に達成しなければならない技術レベルを考えると、問題になるのはEVだ。現行の液系のリチウムイオン電池は質量が重く、コスト低減にも限界がある。やはり全固体電池をいかに早く実用化し、EVがカバーできるクルマの領域を広げていくことが重要だ。

 PHEVに取り組む前提には、「EVの普及には相当な時間がかかる」という想定がある。電池のエネルギー密度向上やコスト低減が遅いので車両に搭載する電池を半分にして、足りない航続距離をエンジンで補おうという発想だ。

 FCVも研究開発は継続している。私の立場で技術開発をきちんとやり、製品開発に移行できるような準備はしておく。ただ、やはり水素を作り出すのにCO2を排出するし、燃料電池(FC)スタックをはじめ技術課題が残る。水素ステーションのインフラを整備するのにも時間がかかると思う。

 だから、繰り返しになるが、日産として注力するパワートレーンはe-POWERとEV(図1、2)。将来的には、EVがかなり主流を占めていくだろうと考えている。

図1 日産の新型EV「アリア」
図1 日産の新型EV「アリア」
日本では21年中ごろの発売を予定する。(出所:日産自動車)
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図2 日産の新型SUV「Qashqai(キャシュカイ)」
図2 日産の新型SUV「Qashqai(キャシュカイ)」
22年にe-POWER搭載車を欧州市場に投入する。(出所:日産自動車)
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 EVが主流になるという日産の読みは、自動車メーカー、とりわけ日本勢の中で異質だ。例えばトヨタは、50年時点でPHEVがパワートレーンの多くを占めるというシナリオを描くようだ。

 一方で共通するのは、モーターなど電動部品のない純粋なガソリンエンジン車はなくなるという点だ。背景にあるのは、カーボンニュートラルの実現に向けて「脱エンジン車」を宣言する国や地域が増えてきたこと。英国やフランス、米カリフォルニア州、日本では東京都もディーゼル車とガソリン車の新車販売を禁止する方針を打ち出した。

 カーボンニュートラルは、自動車業界としても推進していかなければいけない当然の道筋だ。その途中で、いわゆる「ICE ban」といわれている、ガソリン(やディーゼル)のエンジン(Internal Combustion Engine、ICE)を搭載したクルマがなくなるのも、当然の道筋かと思う。日産は、社長の内田誠から発表があったように、30年代早期に主要市場の日本、中国、米国、欧州に投入する新型車を100%電動車両にする計画である。

 電動化の内訳としては、25年ごろはe-POWERの方が多いだろう。30年くらいがe-POWERとEVの比率で結構いいバランスかもしれない。その先は必然的にEVの比率がどんどん増えていき、どこかでe-POWERもなくなる。この時期はまだ想定していないが、e-POWERがなくなった時が当社にとっての脱エンジンとなるわけだ。