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 三越伊勢丹が怒濤(どとう)のデジタル攻勢を見せている。組織を再編し、DX推進をリードするグループ会社を立ち上げ相次ぎシステムを開発するなど、従来にないスピード感で矢継ぎ早にデジタル施策を実行。アジャイルでシステムを開発するため新たなIT基盤も構築した。目指すは百貨店のデジタル変革。新型コロナウイルスで百貨店業界を取り巻く環境が様変わりする中、生き残りをかけた三越伊勢丹の「百貨店DX」の全貌に迫る。

 オンライン接客サービス「三越伊勢丹リモートショッピング」をわずか3カ月で開発、3D計測技術を使った靴の提案サービス「YourFIT365」は構想から4カ月後にローンチ――。矢継ぎ早にDX施策を打ち出す三越伊勢丹だが、驚くべきはその開発スピードだ。

 「従来の三越伊勢丹のシステム開発スピードとは全く異なる。DX機能子会社を立ち上げられたのは非常に大きな意味がある」――。三越伊勢丹の三部智英執行役員MD統括部デジタル推進グループグループ長はこう話す。

三越伊勢丹の三部智英執行役員MD統括部デジタル推進グループグループ長。アイムデジタルラボの社長も兼任する
三越伊勢丹の三部智英執行役員MD統括部デジタル推進グループグループ長。アイムデジタルラボの社長も兼任する
(写真:村田 和聡)
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 DX機能子会社とは2019年10月に三部執行役員の肝煎りで立ち上げたアイムデジタルラボのことだ。サービスデザイナーやデータサイエンティスト、UX/UIデザイナー、システムアーキテクトなど、デジタル変革の経験豊富なメンバーをグループ外から採用。併せて、売り場で販売経験がある社員を同社に所属させ、現場の生の声を反映しながらデジタル変革を進めている。

 三越伊勢丹グループにはIT子会社の三越伊勢丹システム・ソリューションズ(IMS)があるが、「IMSは既存システムの保守や運用といった業務が多く、新たにデジタルの案件で負担をかけるのは難しい。それにデジタルの仕事の進め方はウオーターフォールを前提とした従来型のシステム開発とは異なる。DXの知見を取り入れるためにも外部からデジタルにたけた人材を集め、別会社を立ち上げるべきだと判断した」と三部執行役員は説明する。

 アイムデジタルラボはアジャイル開発を前提とした内製組織だ。現場の声を反映しながらシステムの改善を繰り返すアプローチを採っている。「案件を回すスピードを重視しており、基本的に1つのプロジェクトに対して人員は6~8人程度とし、できるだけ少ないメンバーで回す。関係者を減らしプロジェクトのスピードを速める手法は、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の『ピザ2枚の法則』を採り入れたものだ」(三部執行役員)